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◇2012-12-17 (月)

後期近代文学講座第5回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で後期近代文学講座「文学表現の諸相」(全8回)の第5回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

前回までは、レジスタンスを素材にヒューマニズムを描いた作品を読んできました。先生は「今日は"新感覚派"と呼ばれる作品を読んでいきます」「何をもってそう称されるのかを読み取っていきましょう」とおっしゃって講義を始められました。

まずは、遠藤周作の歴史小説『沈黙』からでした。作品の最終場面を読み、江戸時代初期、"踏み絵"などキリシタン弾圧の渦中にあった司祭の、踏みにじられた信仰心をテーマに描いたものだというエキスとなる部分を味わいました。

次に横光利一の『頭ならびに腹』を読みましたが、冒頭のワンセンテンス「真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で馳けてゐた。」の、主語が人物でなく物であるのが、新感覚派の大きな特徴ということでした。大正13年10月の作品ですが、その前年の9月1日に関東大震災が起きており、"衆愚(大衆心理)"に敏感に反応している作品とのことです。

続いて川端康成の『掌の小説』から「夏の靴」「化粧」を読みました。先生が登場人物の様子や色彩を表すキーワードを指摘しながら一読されると、受講生からは「"小さい靴が一足枯れ草の上に白く咲いていた"をはじめ、とっても絵画的ですね」「そこから先のことまで思い描かせてくれます」などという声が出ました。

「12、13歳で孤児となった川端は、本作品同様、みなし児に対する思い入れが大きい作品が多いですね」と先生。小品「化粧」は、「女性に失礼かなあ~」と笑われながら要所だけを読まれました。そして「化粧には物理的なものと、心理的なもの(身だしなみ=心の化粧)があるようですな」「読めばいくらでも深読みできますね」と話されました。

ここで時間となり、次回はこの続きとサルトルの『壁』です。本日も30名余りの受講生で埋まった講座室、皆さんテキスト資料を手に先生の言葉に耳を傾け、ラインを引いたり書き込みを入れたりしながら熱心に受講されていました。

本年最後ということで、北森貞一館長の挨拶がありました。そして受講生の皆さんへ「植村先生が秋の旧居風景を撮影してくださったものです」と、きれいな紅葉の写真をポストカードに仕立て、プレゼントされました。

本日は大和一大きな祭礼の「春日若宮おん祭」のお渡り式の日で、講座終了後見物に行かれる方もあったようです。旧居の庭では、紅白の山茶花をはじめ、赤や白の南天、千両、万両の実が色を添え、ヤマガラなどの野鳥も遊びに来ています。

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