学校法人奈良学園

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◇2012-11-19 (月)

後期近代文学講座第3回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で後期近代文学講座「文学表現の諸相」(全8回)の第3回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

先生はいつものように前回のまとめから入られました。その講座で取り上げられた田辺聖子作品の特徴として、(1)透察力・認知力のある知的な面(2)ユーモアの中にペーソスを織り込んだ温かみのある面、その双方から言葉の芸術として表出していることを押さえられました。

「田辺聖子は36歳のとき、『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニー)』で芥川賞を取っているのですが、それはフランソワーズ・サガンの影響を受けています。まねたのではなく、新しい時代を生きる感性を日本流、田辺流に書いたのが評価されたのです」と先生。

そして田辺聖子が魅(ひ)かれたサガンの感性を、その処女作『悲しみよ こんにちは』の中に見出すべく、18歳のサガンが17歳のときの"弧愁"を小説に仕立てたその作品の冒頭と最後のポイントをチェックされました。また、前回の講義にあった"書き出しで一発勝負"の作品も何篇かを復習しました。

さて本日の課題、ヴェルコールの『海の沈黙』ですが、先生はまず、それが書かれた時代背景を用意の資料で示されました。それによると、第二次世界大戦前後のヨーロッパでスペイン内乱、オーストリアやフランスの占領と、世はまさにヒトラーの全盛時代でした。ドイツ占領下で対独レジスタンス文学として書かれたのが『海の沈黙』や『星への歩み』で、「だから世界的・歴史的にも文学的価値の高いものです」とのことです。

「この作品の主人公は誰ですか」「登場人物は何人でしょう?」と質問を投げかけられ、主人公の「私」が視点人物となり語り手となった作品の要所を読み進めました。先生は「私は最初読んだとき、日本の能舞台的な作品に思えました」と話され、「前職は画家であった作者ですから、画家の目で描き出した文学です」と続けられました。

『海の沈黙』は、ドイツ人青年将校とその宿所・フランスの民家の住人(叔父と姪)というたった3人の登場人物が、百何日間を過ごしていくときの心理描写を主人公(叔父)の独白劇の形で進めた作品です。微妙な言葉のニュアンスに登場人物の心境の変化を読み取っていきました。惜しくも時間切れで、この続きと『星への歩み』は次回です。

旧居玄関の石畳にはモミジの落ち葉が、錦秋真っただ中の風情を感じさせてくれています。講座途中の休憩中、旧居の庭に実った柿の実で作った干し柿が振る舞われ、受講生の皆さんは「わぁ~、こちらの柿ですか!」「甘いです」と口々におっしゃり、秋を味わっていらっしゃいました。

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