学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2012-11-05 (月)

後期近代文学講座第2回を開催

  • 後期近代文学講座第2回を開催
  • 後期近代文学講座第2回を開催
  • 後期近代文学講座第2回を開催
  • 後期近代文学講座第2回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で後期近代文学講座「文学表現の諸相」(全8回)の第2回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

まず先生は「この<文学表現の諸相>講座では、文学的価値の高いものからポピュラーなものまで、文章や文学表現に特徴のあるいろいろな作家の作品を取り上げていきます」と講座の主旨を押さえてから講義に入られました。

続いて、『細雪』(谷崎淳一郎)、『菜穂子』(堀辰雄)、『夜明け前』(島崎藤村)、『山椒魚』(井伏鱒二)、『蟹工船』(小林多喜二)、『吾輩は猫である』(夏目漱石)、そして井上靖が『その人の名は言えない』発表の5年後に書いたコントの書き出しを紹介し、「一行に満たないフレーズが、読者を物語の世界にぐいっと引き込んでいますね」と話されました。

次に「キーワードになるものを持った作品を取り上げていきたい」と続けられ、ヴェルコールの『海の沈黙』の原文にある二つの<-Adieu>に込められた作者の思い、サガンの『悲しみよ こんにちは』の<Bonjour>など、重みを持った言葉での表出が際立った作品であることを示唆されました。

また前回から読み進めている田辺聖子作品『文庫日記』の中の、「梁塵秘抄」で今様を取り上げた作者、若山牧水の歌に寄せた「幾山河」で、"牧水の恋歌には抽象された格調高さ、新しい古典美がある"と記した作者が、弱き者に優しい(心通い合う愛)目を向けていることを読み取りました。

田辺聖子は、芥川賞受賞作『感傷旅行』で<・・・軽薄な筆致で政治や文化を相対化、猥雑な人間の本性を愛情を込めて描く・・・>と評されていますが、自分の作風について、"大阪弁は人を傷つけず親和力がある、きちんとした批評精神がなければ上質なユーモアは出ない"としていることも話されました。

先生は、田辺聖子を「一方で透察力・認知力のある知的文化人であり、もう一面でおおらかでユーモアと庶民性、あたたかさを兼ね備えた、多重性と二層性の持ち主です。ある意味、非常に個性的な人です」とまとめられました。次回は、ヴェルコールの『海の沈黙』です。

受講生の皆さんは、資料で先生が強調される箇所をマーカーでチェックしたり、メモを書き入れたりされながら、作家と作品の魅力に没頭されているようでした。「お話を聞いて、作品をもう一度読み返してみたくなりましたし、知らない作品にも興味が湧きました」との感想も聞かれました。

旧居の土塀越しに見る紅葉にも風情があり、二階客間からの紅葉風景はまるで一幅の絵のようです。直哉が、この部屋からの四季折々の景色を楽しんでいたことがうかがえます。

▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.