学校法人奈良学園

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◇2012-10-08 (月)

秋期特別講座第5回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座(全6回)を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、5年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師にお招きして開かれるものです。

第5回目の本日は、大阪教育大学名誉教授の梁瀬健先生に「幻の観音様とご対面」と題し講義を行っていただきました。

梁瀬先生はご専門の生物学以外の分野でも多岐にわたって研究対象や趣味を持たれており、今日は足掛け6年間追究してこられた、本館と関わりの深い仏像(聖観音)の話でした。その観音様は、直哉の友人・谷崎淳一郎と直哉が奈良の骨董店で見つけ、谷崎が購入、後に直哉の手に渡り、本館二階の客間に安置され、その後行方知れずになっていました。

先生は、平成18年6月、奈良の古本屋で手にした瀧井孝作の『折柴随筆』の「奈良より」を目にし、仏像のことを知られたそうです。同年9月、大学の図書館で借りられた志賀直哉全集の「来簡集」で偶然開かれた頁に谷崎から直哉宛への書簡を目にされます。そこにはその仏像を、大財閥の安田善次郎の息子に売却しようとする旨の記述があったのです。

先生は同年11月、その仏像が納まったに違いない安田家の大磯別邸の持仏堂を突き止め、足を運ばれ開扉に立ち会われますが、そこはもぬけの殻で大変落胆なさったそうです。ところが翌19年7月、電車の中で読んでいらっしゃった大仏次郎の『敗戦日記』の昭和19年11月26日付に、その仏像が谷崎から直哉に渡っていたという内容を目にされます。

「白樺サロンの会メンバーの中村一雄画伯の紹介で、直哉の二男直吉さんに手紙を書き、その行方を尋ねました」と続けられました。すると直吉さんから電話があり、戦後の窮乏時代に人手に渡ったとのことで、「またしてもなすすべを失いました」と先生は話されます。

本学園が旧居の復元工事を行った際に本館で撮った仏像の写真は見つかったそうですが、所在はわからず迷宮入りかと思われて3年半の月日が流れました。ところが昨年9月、白樺サロンの主宰者で相愛大学教授の呉谷光利氏から、仏像は富岡美術館を経て早稲田大学會津八一美術館に収まっていることがインターネット検索で判明したとの朗報が舞い込みます。

先生は翌月4日、呉谷教授と本館の北森館長とで、観音様との対面を果たされたとのことです。「これで一件落着かと思われたのですが、私が白樺サロンの『りずむ』創刊号に書いた仏像の流転劇を読んで、『これは、○○寺にいらした仏様ではないだろうか』という僧職の方が現れました。仏像のルーツにまで遡る旅が始まります」「もう一度の奇跡を願いたい」と締めくくられました。

"幻の観音様"を"運"も味方に、たゆまず追い続けてこられた軌跡の話の途中、サプライズな休憩時間が設けられました。先生40年来のご趣味の一つに、美術品の絵葉書と切手収集があるのですが、そのセットを受講生全員にくださったのです。更に、ご対面されたときの観音様の写真コピーもファイルに入れてプレゼントされました。

受講生の皆さんからは、「先生はこれから、見つかった観音様のルーツを辿られるのですね。その報告が楽しみです」「いつもアンテナを張っていらっしゃるからラッキーな情報が飛び込んでくるし、執念と言えるまでの緻密な追跡をなさるから、結果が付いてくるのですね。見習いたいです」などの感想が聞かれました。

体育の日にふさわしくさわやかな秋晴れの午後、旧居の南庭では秋明菊、ホトトギス、芙蓉が花開き、柿も色づき始めました。来週は、姫路市立美術館学芸員・平瀬礼太先生による「奈良と銅像」です。

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