学校法人奈良学園

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◇2012-10-01 (月)

秋期特別講座第4回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座(全6回)を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、5年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師にお招きして開かれるものです。

第4回目の本日は、画家の中村一雄先生に「中村義夫の記録『ノスタルジア』」と題し講義を行っていただきました。若草山を眺望する2階の客間が講座室となり、台風17号一過、秋風が吹き抜け、かすかにキンモクセイの香りが漂うなかで始まりました。

中村義夫(1889-1957)は、先生のお父様で、赤穂生まれ、東京美術学校卒、大正10年から同15年までフランスへ留学、昭和3年、当館の西隣にある画友の足立源一郎邸を購入して住人となった画伯です。昭和4年から同13年まで直哉とは隣人であり、高畑サロンのメンバーとしての親密な付き合いがあったということです。

先生は、中村義夫の作品は、没後50年を経て注目をされ始めたと語られ、残された日記や作品などを基にその掘り起こしを続けられてきた中から、義夫の画業と恋のエピソードなどを披露されました。

義夫のフランス留学中の軌跡を辿られている先生は、義夫が4か月も住んだというノルマンディ・イポールの旧居を訪ね当てられたそうです。そして同じ構図で描いた風景画を義夫の作品と並べて見せ、「親子が一つにつながれた思いでした」と感慨深そうに話されました。また、義夫の滞仏中の恋愛相手からの熱烈な恋文の訳文を読み上げられました。

先生は今も旧足立邸の住人で、南仏プロバンス風の洋館の特徴などの紹介もありました。建設当初、地下にはワイン蔵があり、ステンドグラスやルネ・ラリックの電灯など、そのエキゾチックさが奈良にそぐわぬと僧侶が投石したことがあったことや、米軍占領下で改築されたことなどにも触れられました。

直哉が旧居在住の頃、先生はまだ幼く、先生にとって直哉は"隣のおっちゃん"だったのですが、「気難しい直哉と、ここに写っているように威圧的で付き合いの悪そうな風貌のままの父・義夫でしたが、お互いに腹を割った親しい付き合いだったようです」と、旧居のサンルームで義夫や直哉が一緒に写っている写真を見せられました。

「志賀さんとはどういうお付き合いだったのですか?」という参加者の質問に、「志賀家に嫌な客が来たら『隣の義夫さん呼んで』と直哉から呼び出しがかかってましたねえ。食事もよく一緒にしたようです」「"隣のおっちゃん"が来たら戸を開ける(互いの勝手口から勝手口への行き来)のが僕の役割で、そのたびに『大きくなったね』と声をかけられました」など、懐旧談を語られました。

また、「僕が13歳のとき、正倉院展に来寧した足立源一郎さんが訪ねてきて、うちでカルメラを焼いてくれました」などという話も出て、出席者の皆さんは「直哉や足立氏に直接会っている、まさに"生き証人"からの興味深いお話でした」と、喜んでおられました。来週は、大阪教育大学名誉教授・梁瀬健先生による「幻の観音様とご対面」です。

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