学校法人奈良学園

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◇2012-09-24 (月)

秋期特別講座第3回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座(全6回)を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、5年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師にお招きして開かれるものです。

第3回目の本日は、相愛大学教授の橋元淳一郎先生に「物理の時間、生命の時間」と題し講義を行っていただきました。

先生は山口大学時間額研究所の客員教授や大学予備校の講師もされており、物理学や学習参考書など著書も多く、高校・大学の物理界ではカリスマ教師としてご活躍されています。自己紹介の中で「僕を知らない高校生はもぐりです」と笑わせられ、「一番好きなことはSF小説を書くことです」とも語られました。

志賀直哉の『リズム』にある"精神のリズム"。橋元先生は、白樺サロンの会の『リズム』創刊号への寄稿文『リズムと物理学』に、「我々の祖先は、心臓の鼓動にリズムを感じ取り、同時に時間という概念を得たのだと思う」とし、「さらにその根源に遡れば、単細胞バクテリアの脈動こそが、時間の流れそのものである」と序文に書かれており、「きょうは、この一文について話します」とおっしゃって講義に入られました。

先生は『時間はどこで生まれるのか』(集英社新書)という本も出されているように、時間研究者です。本日はそのご専門の"時間の流れ"について "なぜ未来に流れるのか"を、いろいろな事象に例えながらわかりやすく話してくださいました。

まずは目に見えない<時間>についてです。<色>が実際には存在せず人間が脳で認識しているだけであり、<温度>も体細胞分子の振動により熱く感じたり冷たく感じたりするもので、"自分が考えている時間"もそんなものではないかという仮説を立てられました。

ニュートンの絶対時間やカントの『純粋理性批判』も織り交ぜた後、20世紀になりアインシュタインの相対性理論によってそれまでの物理学が覆されたことを、"動いている人の時間は短い"例を挙げて説明されました。それを"浦島効果"と言うとのことです。ちなみに光の速さの秒速30万キロで走れば時間は止まるということになります。

次に時間軸と空間軸を進む電子を描いた<ファインマン図形>を板書し、その軸を入れ替えて読むことも可能だと説明されました。ミクロ世界(素粒子世界)では時間の流れはなく、時が過去から未来へ流れていると思うのは思い込みだと指摘されます。

「では<因果関係>はどうなるのでしょう」と続けられ、熱力学の<エントロピー増大の法則>を持ち出されました。エントロピーとは"無秩序"で、この法則によれば、きれいに片付けた書斎も日数が立てば散らかっていくように、秩序あるものは放っておいたら無秩序になっていくとのことです。

すなわち生命もエントロピーが増大すれば死に至り、肉体の腐敗が始まると。「我々の体(生命)はいつもこのエントロピーの法則に逆らい、秩序を生み出しているのです」と話されます。その逆らわせているものは何かといえば、「それは"生きる意思"です。ここに"時間の流れ"はできるのです」と結ばれました。

受講された方々からは「普段考えたこともないような世界の話で難しかったですが、時間の流れについての考証が面白かったです」「"生きる意志"がエントロピーに逆らい、自分の時間の流れを作り出しているという興味深い話が伺えました」などの感想が聞かれました。来週は画家の中村一雄先生による「中村義夫滞仏の記録『ノスタルジア』」です。

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