学校法人奈良学園

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◇2012-09-10 (月)

秋期特別講座第1回を開催

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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座(全6回)を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、5年前に発会した"白樺サロンの会"の有志を講師にお招きして開かれるものです。
第1回目の本日は、その代表で相愛大学教授の呉谷充利先生に「谷崎・志賀の観音像と文学」と題し講義を行っていただきました。

はじめに北森貞次館長から「当館2階にあったもので戦後行方不明になっていた観音像の行方を探り当てた方であり、本館の復元に尽力いただいた先生です」と紹介の後、呉谷先生の講義が始まりました。

白樺サロンの会の会誌『りずむ』の創刊号を参考に講義が進められ、同じ時代を生き、一つの仏像を巡って交流のあった谷崎潤一郎と志賀直哉の二人という切り口で、まず明治から大正にかけての時代考証から始まりました。先生によると、東洋・西欧の文化を内発的に取り入れた時代、即ち相反する精神世界に向き合いながら自分自身を作り上げていった時代だということです。

そんななか、『新思潮』に属し、耽美派(芸術至上主義的作風)の谷崎は永井荷風を崇拝し、25歳のとき『刺青』で一躍文壇デビューを、白樺派(人道主義的作風)の直哉は29歳のとき『大津順吉』で初めて稿料を得ます。関西弁に文体移行して飛躍を遂げた谷崎と、内村鑑三に付いてキリスト教を学び、東洋古美術との出会いに安らぎを得て、この高畑で『暗夜行路』を完結させた直哉。

二人を多方面から比較しつつ、いよいよ話題は観音像に移ります。昭和2年、奈良の骨董屋で二人が目にし、谷崎が巨費を投じて購入、のちに直哉に譲られ、この旧居の2階客間に置かれた観音像。谷崎によって補修されていた手と足を、直哉は元に戻させたという話も二人の対照性を示すものです。先生の考察によれば、「この仏像こそ、谷崎作品『続羅堂先生』に登場する女優生野真弓のモデル」ということです。

最後に、講義室である食堂の壁を指し、「この壁は浅葱(あさぎ)色なんです。何度か塗り替えられたものを、復元の際にめくっていったらその色が現れました。そして阪神大震災で全壊した神戸の谷崎邸『鎖瀾閣』は、中国風のデザインでピンクの壁でした」と、復元調査の陣頭に立たれた先生ならではの話で締めくくられました。

受講された方々は「一体の仏像を巡って、対照的な二人の具体的な比較など、面白い話が聞けました」、「奈良というところで大文豪のそんな出会いがあったというのがすごい」などと話され、次回を楽しみに帰途につかれました。来週は奈良女子大学名誉教授の弦巻克二先生による「志賀直哉の文学」です。

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