学校法人奈良学園

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◇2012-09-03 (月)

夏期近代文学講座第8回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で緑陰講座「文学表現の諸相」第8回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本講座は今回をもって最終回となります。先生は「ボルト(ロンドン五輪陸上で金メダル獲得)並みのスピードで、『斎藤茂吉歌集』の『白き山』まで走ります」と始められ、先週の講義内容で示された「茂吉の波乱万丈の人生や人となりと、その作品の特徴」について、裏付けをとる手法で代表作品を中心に読み進みました。

最初に『あらたま』の歌「ふり濯ぐ灑(そそ)ぐあまつひかりに目の見えぬ黒き蛼(いとど)を追ひつめにけり」を再び取り上げられ、小さなコオロギに自分自身を投影し、激しいテンションの高まりを表していると評されました。

母や恩師伊藤左千夫の死があり、「アララギ」編集発行人という重責を担った30代、海外留学、青山脳病院(養子先)全焼と再建、友人芥川龍之介の死などが続いた40代、妻輝子の鹿鳴館騒動と別居による精神的負傷の50代、敗戦と「短歌追放」の風潮と老いゆく60代それぞれの作品を追いました。

そして、音のない風景描写の歌の中にも茂吉自身が感じている音が読み取れることで、茂吉は音感に優れた人であることを再確認しました。また小さな昆虫、動物や子どもに対する慈愛深さを、それぞれの歌で読み取りました。

晩年の作品では、60代でことさらに老境を意識し、それを創作世界へのエネルギーにしたことを作品で確かめながら『白き山』までを読み終えました。

最後に先生は「茂吉は、31文字という限られた文字数の中に、"和語(大和ことば)"の持つ調べに激しく心を投入(造語も多い)しており、それが現在もなお茂吉作品の魅力(その音でより強く醸し出される)の源となっています」とまとめられました。そして先生の論考である『創作過程考 斎藤茂吉―作家と万葉調―』(『まほろば』1993年3月)を示され、「緑陰講座」は終了しました。

受講生の皆さんは、深くて広がりのあったこの充実した「緑陰講座」を受け終え、感謝を込めて大きな拍手を先生に送られました。今日の旧居は、セミの声もすっかり鳴りを潜め、秋のはじまりを思わせるようでした。来週からは「秋期特別講座」が始まります。

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