学校法人奈良学園

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◇2012-06-04 (月)

夏期近代文学講座第3回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で緑陰講座「文学表現の諸相」第3回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本講座では先生が用意された資料を参考にしながら、『斎藤茂吉歌集』(岩波文庫)を読み進めています。「今日はスピードアップして『赤光(しゃっこう)』は読み終えたいと思います。いつものように"大きな独り言"あるいは"寝言"でもいいですから、自分なりの解釈など、気づいたことを声に出してください」とおっしゃって始まりました。

大正元年作「葬り火」からです。自殺した患者の葬送場面を詠んだ歌に対し、茂吉の次男・北杜夫が『青年茂吉』に書いているくだりを参考にしながら読みました。「葬り火」の3首にも、「入日」「赤光」や「赤き火」など、前回までに学んだ茂吉作品の特徴のひとつである、"赤"という色彩でつらく悲しいという心情が表現されています。

続く「冬来」でも、患者を失った精神科医の気持ちが詠われているのですが、先生が「鶴のあたま」という言葉でやはり"赤"が使われています。「ひとりの道」では、黙読のあと、「素材を歌いながら、一人歩む男の孤独感と"やったるでぇ=going my way"の気持ちが表れていますね」と説明され、続けて「茂吉30~31歳のこの時期になぜこのような歌なのでしょう」と、問いかけられました。

先生によると、(1)「おくに」「おひろ」という女性との別れ(実らない愛・人生) (2)自分に馴染まない幼な妻との関わり(馴染みたい&怒り) (3)14歳で故郷山形を離れ、東京という大都会に身を置いた孤独 (4)日本を代表する歌人への歩み(意気込み)が挙げられるということです。

次々と読み進めていくなか、「ゴオガンの自画像みれば・・・」の歌があり、先生は「文学作品は思うように読んだらいいのですが、共通理解は必要不可欠ですから」とおっしゃりつつ、ゴーギャンの自画像を受講生に見せられました。

『赤光』から『あらたま』に進み、大正二年作、根岸の「紅色の獅子」では、往年の歌謡曲『越後獅子の唄』の歌詞を参考に、「昔の演歌は歌詞がいいですねぇ」と詞の大切さに触れられました。続く「おひろ」では、先生が用意された資料で44首を読みました。次回は、「死にたまふ母」からです。

本日は、「緑陰講座」にふさわしく、教室の左右に庭の新緑を目にし、葉擦れの音を耳にしながらの講義となりました。日々緑が濃さを増す旧居の庭ですが、茶室の待合の前では定家蔓(テイカカズラ)が、小さなかわいい花をたくさんつけています。

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