学校法人奈良学園

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◇2012-05-21 (月)

夏期近代文学講座第2回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で緑陰講座「文学表現の諸相」第2回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本日は、日本の広い範囲で観測できるのは平安時代以来932年ぶりとなる金環日食を観ることができ、「観ました?」「観ましたよ。感動的でした」などという声が飛び交うなか、講座が始まりました。はじめに、前回の講座内容にあった大和郡山市の「枳殻(きこく)地蔵」について調べてこられた受講生があり、その由緒の読み上げやスケッチ画での紹介(写真:下の2枚)がありました。

先生は、「今日は、要らんこと(注:寄り道)はできるだけ言わないようにして、茂吉の歌をどんどん読み進めていきます」とおっしゃって、テキストの『斎藤茂吉歌集』(岩波文庫)と資料の『作歌四十年』をもとに、大正元年作「しろがねの雪ふる山に...」の歌から入られました。

「しろがねの」という枕詞的用語について先生は、「茂吉は、わずか31文字の中に堂々とこういった語を用いていますが、これは音調効果を狙っています」と説明、「茂吉の作品にはほかにもたくさんあります」と続けられました。

次の「赤茄子の腐れてゐたる...」では、「茂吉が"これは現實(現実)で即ち寫生(写生)である"と述べているように、熟したトマトが変色して捨てられているという現実(事実)をしっかり捉え、それに即して発する自分の心情や考えを象徴するものであり、それを読み取ってくれと言っているのです」と。

「満ち足らふ心にあらぬ谿谷(渓谷)つべに酢をふける木の實(実)を食むこころかな」で、「茂吉は"酸っぱさ"の中にいろいろなことを思っています」と、茂吉の歌の特徴を次々と示してくださいます。「猫の舌のうすらに紅き手ざはりの...」では、猫の舌の視覚と触覚の「悲しさを知りそめにけり」と、茂吉が言うところの「"覚醒"は"感性"であり、"感性"は、価値あるものにハッと気づく感覚です」と、説明されました。

そして、師であった伊藤左千夫に対する闘志が垣間見える下りでは、師逝去の報に際しての作品『悲報来』へ飛ばれ、茂吉の複雑な心境を解説されました。島木赤彦宅へ駆けつけたという茂吉ですが、先生は地図を用意され、距離的なことなどの説明後、「作品鑑賞にはこのように多少のプラスアルファーのバックがあるといいので」と、鑑賞の手助けとしてのヒントをいただきました。

先生の講座中はいつもあることですが、今日も途中で旧居の見学者(何と、仙台からの方々でした)に声をかけられ、「講座をやっておりますが、遠慮なく中へ入ってご見学ください」と招き入れられ、講座室になっている「食堂」の特徴を説明されました。

旧居の中庭では定家蔓(テイカカズラ)が、池の傍では黄菖蒲が開花し始めました。

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