学校法人奈良学園

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◇2012-05-07 (月)

夏期近代文学講座第1回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で夏期近代文学講座「文学表現の諸相」第1回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

夏期近代文学講座の第1回目は、北森貞次館長の挨拶で始まりました。その中で、「植村先生から"夏期講座"ではありますが、文学講座ですので藤村にあやかり『緑陰講座』としたいと申し出があり、名称を『緑陰講座』にいたします」と、館長の説明がありました。

『緑陰講座』は大テーマを「文学表現の諸相」とし、<斎藤茂吉をめぐって>と<作歌と文芸>の2つをポイントに進められます。植村先生は、「私の知っている限り、いろいろな角度から茂吉を取り上げたい」とおっしゃり、受講された皆さんは「先生の知識の引き出しからあふれる」ものに期待を抱かれたようです。

「茂吉は、柿本人麻呂以来、日本詩歌の中で必ず挙げられる歌人であり、来年は茂吉の『赤光』百年です。100年も昔の歌でありながら今に通用する、その感性を味わいましょう」と話されました。今日は新たな講座の始まりですが、受講生の多くは昨年からの近代文学講座を受けてこられた方々で、先生もそれを踏まえた形で進めていかれました。

「いきなり余談ですが・・・」と断られて、映画化される前から、本講座で取り上げる予定にされていた井上靖の『わが母の記』の文庫本が紹介されました(写真)。「その主要部分と言える『花の下』と『雪の面』のコピーを用意しました。読んでおいてください」と、宿題が出されました。

そして、井上靖の作家デビューの頃の作品にある華やかな作風のものと、晩年のしみじみとした内容のものをそれぞれ何作ずつか例に挙げ、その転換点となる作品が『わが母の記』だと話されました。

また、準備された「井上家系図」をもとに、『わが母の記』の作中人物に当たる人々を紹介しながら、「作品というものは、作者が言葉で作り上げた芸術であり、事実もありますが、"自己劇化(美化)"したフィクションですから、それを踏まえた読解が大切です」と、注意を促されました。

楽しい前段に続いて<現代の三十六歌仙が選んだ斎藤茂吉の22首>を詠みました。明治44年から昭和26年までの間に茂吉が詠んだもので、亡くなる2年前までの歌です。時代を反映しながら、平穏でなかった頃と、穏やかな気持ちになっていく晩年に至るまでの歌は、茂吉の人生の変遷そのものを凝縮しているようでした。

休憩を挟んで『斉藤茂吉歌集』の『赤光』の続きです。明治44年の作品中、「うつし身の・・・しみじみとして雨ふりにけり」という歌では、茂吉が擬態語と擬声(音)語を独自の形で転用していることに触れられ、受講者の中には目をつぶってその情景を想像されている方もありました。

次の大正元年の作品には、「赤茄子」や「紅蕈(たけ)」などの作品がありましたが、「茂吉の歌には"赤色"が頻出します」と、茂吉の歌の鑑賞のキーポイントの一つを強調されました。

ゴールデンウイーク明けの本日は、隣接の奈良公園も本館も"新緑萌ゆ"のまぶしさでした。その新緑のなか、平戸ツツジが紅一点の映えを見せています。そして先日から今年も旧居の住人となったモリアオガエルが、軽快な鳴き声で受講者や見学者を迎えました。昨年は5月半ばに産卵を始めましたので、今年もまもなくかと心待ちにする雰囲気に包まれていました。

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