学校法人奈良学園

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◇2012-04-23 (月)

春期近代文学講座第6回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で春期近代文学講座「光への憧憬」第6回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本日は、春期近代文学講座の最終回ということもあり、北森貞次館長から植村先生をねぎらっての挨拶がありました。その中で、当旧居がNHK奈良のウイークエンド関西に登場したり、雑誌の取材等が増えたりと、志賀直哉と旧居への注目度が高くなり始めていることの報告に続いて、「今年もモリアオガエルがやってきました。奈良県では絶滅危機種になりかけているだけに、旧居で産卵・孵化してまた春日の杜に帰っていってくれるのが喜ばしいことです」と、うれしいお知らせも。

さて春期の最終回とはいえ、ほとんどの方がこのまま5月開講の夏期講座「斎藤茂吉をめぐって」「作家と文体」も継続受講されますので、いつもと変わらぬ教室風景でした。先生は、前回のまとめから入られ、斎藤茂吉の作品を、《1》伝統的な詩形(五七五七七という公的文体)で現代人の個人的な生活感情の表出 《2》茂吉文学の魅力 〈1〉三位一体(短歌、詩論、文学研究) 〈2〉二面性・多面性(故郷・山形と住地・東京/日本と欧米)《3》文学一般 ということにポイントを置いて読み進むことを再確認されました。

そして「予備知識として茂吉の作品に登場する地名を多少知っておきましょう」と、用意されたマップで元・青山脳病院所在地や代々幡斎場、山形県南村山郡金瓶の生家や宝泉寺などを確認しました。休憩を挟んで、『斉藤茂吉歌集』(岩波文庫)の『赤光』の続きに入りましたが、前回詠んだ「月落ちてさ夜ほの暗く未だかも弥勒は出でず虫鳴けるかも」の解釈に補足を入れてより深い説明をしてくださいました。

上の句と下の句が飛躍象徴的なのが茂吉作品の特徴の一つでもあるのですが、「一見飛躍している二つのことのつながりを読み取ってほしいという願いがあるのですねぇ」と先生。「かがまりて見つつかなしもしみじみと水湧き居れば砂うごくかな」は、啄木の作品とも共通性があると何例か挙げられ、更に八木重吉の作品とも似通っていると、先生の好きな「雨」や「幼い日」「雲」「バッタ」などを紹介くださいました。

途中、先生ご奨励の"大きな独り言"が受講生から何度かあり、その都度教室は笑いに包まれたり活気づいたりしました。「田螺と彗星」では、タニシにも温かい人情を持った茂吉に触れ、「木のもとに梅はめば酸しをさな妻ひとにさにづらふ時たちにけり」は、28歳の茂吉が15歳の「をさな妻」へのいとおしさを詠んでいるのですが、そういった歌は後にも先にもこれ一首とのことと、「をさな妻」という言葉は、茂吉の造語だとのことです。

楽しい講座の時間はあっという間に過ぎ、「今日も相変わらずの余談が多くて、この調子では・・・」と先生が詫びられるのですが、「それが先生の講義の魅力です!」と、拍手でもって春期講座を終了しました。

初夏を思わせるようなぽかぽか陽気の今日、旧居の南庭ではミツバツツジが濃いピンクの花を付け、池では館長の報告にあったモリアオガエルの小気味よい鳴き声が明るく響いていました。一時にやってきた春は、受講生の皆さんの庭の花も満開にしたようで、姫リンゴと木瓜(ぼけ)と椿を持参くださった方があり、早速職員の手で玄関や茶室に生けられました。

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