学校法人奈良学園

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◇2012-03-26 (月)

春期近代文学講座第4回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で春期近代文学講座「光への憧憬」第4回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本日は、竹西寛子の『神馬』が、独善や偽善といった人間の業のようなものと、幼いながらその不条理の世界に気づかされていく主人公の潜在的な不安を描いていることを復習して次の"光"の作品に進みました。

大岡信の『星を見る人』や井上靖の『星蘭干』を例に、星の光や瞬きは月明かりと違って、悲哀感あるいは絶望感を抱いた人が作品にすることが多いことを読み取り、梶井基次郎の『Kの昇天』、『檸檬』、『闇の絵巻』、『泥濘』を、主人公の心理描写を中心に先生の解説を受けながら読んでいきました。

『Kの昇天』では魂と影と肉体(形骸)という3つの転生感覚がポイントの作品ですが、一人の鋭い感覚や感受性を持っている人間が、それに応じた分身という対象を創り出して、それを見つめることによって精神の安定感や存在感、平衡感覚を取り戻せることを描こうとしているということです。

梶井文学は"感覚的実存(人間存在)の希求"だと言われ、それは、『檸檬』でも然りで、レモン一個の感覚で実存を感じ甦っていくということが、我々人間にはあるのだと。また『闇の絵巻』では、闇を「絶望への情熱」「闇の中の安堵・安息」「闇を愛する」「闇への情熱」と感じ、小さな電灯の光は「遠い遠い気持ち」にさせると記しています。

『泥濘』で描かれる草原の中で風に揺れる草のような感覚(錯覚、一種の転生感覚)のところでは、先生の釣り体験(浮きになったような感覚)や、曽爾高原でススキに同化した体験、山村暮鳥の詩の一句「おうい雲よ・・・」などを例に出されました。また、「雑踏の中で両耳に手を当ててみると、ガオガオという音が聞こえます」という下りでは、全員が先生と一緒に両耳を手で覆ってその感覚を確かめました。

梶井作品を読み進めた本日の最後に、やはり"人間存在"を主題にした作家・サルトルの『壁』を紹介くださって「私たちの人生は往々にして"偶然"が支配している」と結ばれ、次回からは「斉藤茂吉をめぐって」というテーマで進めると予告されました。

受講生の中には、電子辞書を携えて参加される方も多々あり、先生が次から次へと紹介くださる文学作品や作家、また文学用語などを、その都度辞書で調べては理解を深められています。そして「学生時代に戻ったような楽しい一時間半です。なかなか一人では深読みできませんから」とおっしゃって、旧居を後にされます。

季節の歩みが遅い今年ですが、一階書斎前の招霊(おがたま)の木は早々と花を咲かせ、見学者の方々は二階客間からその白く可憐な姿を楽しんでおられます。

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