学校法人奈良学園

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◇2012-03-05 (月)

特別公開講座《古典文学シリーズⅢ》を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で特別公開講座《志賀直哉旧居で読む古典文学シリーズⅢ》第12回を開催しました。当館の北森貞次館長を講師に、前回まで "源氏の後半生"として『花宴』から『幻』までの要所の抜粋を、紫式部の男性観、女性観などと共に読み進めてきました。本日と次回はそのまとめになります。

「源氏物語の切り口はいくらでもありますが、ここではある女子大の調査結果で一番嫌われている源氏と、その次の六条御息所について話したいと思います」との言葉で始まり、なぜ六条御息所が重要な存在なのかを、今までの講座を振り返りながら検証しました。

六条御息所は美しく賢明で貞淑な女性でした。若くして皇太子の正妻となりますが死別、一人娘を持つ未亡人となります。その寡婦に源氏は執心します。ところが七つ年上の聡明な女性は源氏にとって窮屈、次第に疎遠になっていきました。源氏への思いを絶とうと娘の斎王に同行、伊勢へ下りやがて死ぬのですが、彼女の霊魂は、源氏の相手を襲います。

生霊は夕顔の時にもいたと思える記述(「六条わたりのお忍びありきのころ・・・御枕上に、いと、をかしげなる女ゐて・・・」)がありますし、正妻・葵上には出産の時です。御息所は「物思ふ人のたましひは、げにあくがるゝ物になむありける・・・略・・・わが身ながらだに、うとましう思さるゝに」と反省もしていますが、女三宮の時には、死霊となって取り憑き彼女を出家させます。

先生の話は、まず「もののけ(物の怪)」の歴史からで、桓武天皇や冷泉天皇も取り憑かれたがいずれも継承争いが因で男性に憑いたのに対し、女性では源氏物語が初めてということです。実生活では賢明な女性なのに、あまりの嫉妬や怨念は、肉体を離れて人に取り憑くものなのでしょうか。

先生は「紫式部の思考の近代性」と銘打って、"亡き人にグチを言って病気になるのも己の心の鬼だ、亡霊とか物の怪とかは実在するのではなく自分の心の中にいるのだ"と式部の『家集』に残る歌を紹介、人の心に潜む闇の世界も式部は描いていると話されました。

そして六条院に住まわせた人々の中では死に滅んだ人もいるのに、花散里、夕霧、秋好中宮(御息所の娘)たちや明石上も後々まで残したのはどうしてでしょうと投げかけ、「明石上の容貌は六条御息所に似ていた上、彼女は源氏の遊ばれ女にならなかった」「つまり式部は、六条御息所を通して一夫多妻制を痛烈に批判したのです」と結ばれました。

"源氏物語の伏線"ともいえる六条御息所の話を終え、次回は源氏自身のことと、物語ゆかりの地を紹介してくださるとのことです。「濃い内容のお話でしたねえ」と口々に感想を言い合いながら、講座生同士、京都へ繰り出す話もまとまりかけているようです。

お水取りの本行5日目の今日は、朝から本降りでしたが、春を感じさせる温かさで、裏庭の梅が1~2輪開花し始めました。

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