学校法人奈良学園

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◇2012-02-14 (火)

平成24年度春期近代文学講座第1回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で春期近代文学講座「光への憧憬」第1回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。人気の当シリーズは今回も、募集20名に対して40名を超える申し込みがあり、講座室の食堂に加え、サンルームも開放しての開講となりました。

北森貞次館長の挨拶の後、植村先生はいつものように用意された資料を示されながら、「ここ高畑の、古の文化サロンにあやかって、皆さん方と一緒に文学を楽しんでまいりたいと思います」「大きな独り言、大歓迎です。お互いに知恵を出し合って読み進めていきましょう」と、6コマの講座の大まかな流れを説明されました。

前半は"光"を素材・題材にした文学を、後半は芥川にも大きな影響を与え、いろいろな魅力をもった人物・斎藤茂吉が予定されています。茂吉は先生が少年時代から心惹かれていた歌人であったということです。

本日は、まずユニークなタッチの内容で知られる日野啓三(1929~2002)の作品からです。講義は、彼の死後3年目に、先生が教育随想として「やまと」351号に寄稿された一文を資料に進められました。

芥川賞受賞作『あの夕陽』、『流砂の遠近法』、『自薦エッセイ集~魂の光景~』の作品から、彼がユングのものの捉え方に啓発され、"光への憧憬、意識に対する憧憬"を自ら体感し、それを創作世界の中に描こうとしたということを確認しました。

先生によれば『あの夕陽』は「光の心象風景」であり、『流砂の遠近法』の中の「わたしは何者か」との問いは、本能と意識のバランス(意識過剰=不安の増大)の考察であると。そして光に惹かれた作家は、"魂の光景の美"に心を傾けつつ、個性的に輝きながら没したとまとめられました。

途中、『流砂の遠近法』で砂漠の持つ絶対的な美と魂の光景に心を留めて、それを言語形象として語るところには、"砂漠の作家"サン・テグジュペリと一脈通うものがあるとのことで、『星の王子様』以外に『人間の土地』や『夜間飛行』なども「未読の方はぜひ!」と勧められました。

最後に、日野啓三の晩年作『落ち葉』を読みました。先生は、「あの世とこの世の狭間に立ち会い、かすかな世界の中に人生を捉えることができたすばらしい作家です。今日はその一端を垣間見ることができたのではないでしょうか」と結ばれました。

旧居の庭には一葉も纏うことなくオブジェ化した木々が冬景色を作っています。その一つ百日紅の幹の「顔」を写真でご紹介。一つ二つ白いスズラン状の花を咲かせ始めて春待ち顔の馬酔木(アセビ)は、次回講座の2週間後には写真映えすることでしょうか。

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