本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋季特別講座の第2回目を開催しました。 今回は、奈良高等学校校長や天理市教育長などを歴任された吉岡溥氏による「日本の庭園・旧居の庭園」と題した講義でした。先生は奈良の教育界でのご活躍と同時に、本学園・奈良文化女子短期大学や添上高校、桜井高校などの前庭の造園にも尽力された造園・園芸家でもあります。
吉岡氏は、志賀直哉旧居の庭園のすばらしさを語るにあたり、日本庭園の原型ともいえる東院庭園(奈良朝)から始まり、平安時代の浄土式、鎌倉・室町時代の無窓国師の残山剰水(縮景法)、室町時代の枯山水、桃山文化の作庭、江戸時代の回遊式、明治に向けての借景庭園、明治以降の洋風造園、と時代を追って説明。
円成寺や、天竜寺、竜安寺、二条城二の丸、桂離宮、修学院離宮、慈光院、依水園、日比谷公園等々、主に近場の名庭を、その形式と特徴や見どころを写真を見せながら、楽しいエピソードも交えながらの語りでした。
そして、志賀直哉旧居の庭は、玄関前の前庭、茶室前の中庭、主庭の池泉と南側の芝生広場、裏口に回る側庭と、実際に見て回りながら、その植栽にも触れ、昭和初期に和の侘び・さびと洋のモダンを取り入れた、しかも二階客室からは三笠山・奈良公園を一望という借景公園であると結ばれました。
最後に、"健康に楽しく生きる"には、"音・美・書・体・技・家・特活"と、中学校の学科世界を実践すればいいと、学校教育の経験者らしいユニークなアドバイス。皆さん大きくうなずかれていました。
出席者からは、「今までは名庭・名園も何気なく観光していたけれど、今度は今日のお話を参考に、とくと楽しみたいです」「借景はスペースディバイダー(生垣などのしきり)あってこそとか、アプローチ庭の効果とか、なるほどと思いました」など、庭の鑑賞法がより深まったとの感想が聞かれました。
旧居の庭にもキキョウやススキが咲き、彼岸花も小さな頭を突き出しました。猛暑で遅れていた秋もやっと訪れ、随所にその気配を見せています。 |