学校法人奈良学園

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◇2011-03-07 (月)

冬期公開講座《近代文学シリーズⅠ》(全6回)第5回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で冬期公開講座《志賀直哉旧居で読む近代文学シリーズⅠ》(全6回)の第5回目を開催しました。本シリーズは、講師に京都大学以文会評議員の植村正純先生をお招きして、井上靖と志賀直哉の作品を読み進めています。

東大寺二月堂のお水取りも中盤のこの日、旧居の梅は満開となり、凛とした芳香を漂わせていました。

先生はまず前回のまとめから入って、井上靖の『海』『二つの絵』『回転ドアー』『漆胡樽』などを挙げて、物体に託して人生を象徴的に表現していることを学んできたと、皆の頭の中を整理してくださいました。

そして『仙境』『生と死』『傍観者』と読み進みましたが、「この"傍観者"という言葉こそ井上靖文学のキーワードだと思います。彼が、物事にのめりこむことなく"傍観者"として生きたから、今私たちの前にこれだけの文学が遺されたわけです」とおっしゃいました。「だから、読む人に親近感や切実な共感を覚えさせるのです」と。

大きく4分類した「青春」の中の『川明かり』と『石英の音』では、「中学3年のときの友人・藤井壽雄の3行詩がまさに井上文学の"洗礼"であり、彼の文学人生の"一期一会"だったのです」と説かれ、『褒姒(ほうじ)の笑い』では、「"一生懸命な人生がもたらす茶番" に読者は人生の孤独や哀歓、運命を読むのです」と、自著の『創作過程考』も参考にと教示くださいました。

最後に再び、"井上靖の小説や詩は、「物」に託して人間・人生を普遍化し・典型化する象徴的表現の冴えである"と結ばれ、受講生は大きな拍手で味わい深い講義を称えました。

明日は受講生の有志半数が、 "井上靖文学散歩"として植村先生とゆかりの沼津ほかを訪ねる一泊旅行に出かけます。「"文学は風景を新しくする"をかみしめて"青春"してきます」と思いは早、東に飛んでいるようでした。

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