本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で春期公開講座《志賀直哉旧居で読む古典文学シリーズⅡ<源氏物語>》第5回を開催しました。本講座は"源氏をめぐる女性たち①"として紫式部の男性観、女性観などを読んでいきます。講師は当館の北森貞次館長です。
本日は『帚木(ははきぎ)』の続きからです。光源氏は紀伊守邸の義母の空蝉を口説き一夜を共にしたのですが、空蝉は源氏を憎くは思わないものの、人妻(伊予介の)なのに不倫を犯したことと、国司(地方長官)の娘という身分(低い)であることから思い悩み、自分の女にしたいと思う源氏をすんなりとは受け入れようとしません。
物語では12歳から17歳のこれまで、源氏の女遍歴は書かれていないのですが、実はあまたあったわけで、源氏にしたら初めてのかなわぬ恋の態となりました。ここで、源氏と空蝉の間の使い走りを、源氏に雇われていた空蝉の弟・小君が受け持つのですが、この小君を源氏は「あはれにおぼさり」、そばで寝かせるなど、物語は第3巻『空蝉(うつせみ)』へと続いて、恋の糸は怪しく絡んでいきます。
この日もbm通韻や二重母音などが随所に現われ、文法の復習もしたのですが、奈良の言葉にも古語の流れを汲むものが多いと教わりました。たとえば、大和高田の方言の 「いたいす?(いらっしゃいますか?)」や桜井の「○○ちゃる」、奈良の「○○じょ」などもそうですとか。
「文法など教わっては忘れてなかなか覚えられないけど、先生のちょっぴりシニカルな論評に笑わせていただけて・・・」と、梅雨真っ只中、時折激しい雨が隣のサンルームの天窓をたたいていましたが、物語の世界に入りきっていらっしゃる受講生の皆さんの耳には届かない様子でした。庭の池では、モリアオガエルがお気に入りの丸ツゲの木に今季3度目の産卵。見学者らに「うわぁ~、初めて見ました」と喜ばれていました。 |