本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で特別公開講座《志賀直哉旧居で読む古典文学シリーズⅡ<源氏物語>》第7回を開催しました。本講座は"源氏をめぐる女性たち①"として紫式部の男性観、女性観などを読んできました。講師は当館の北森貞次館長です。
本日は第4巻の『夕顔(ゆふがお)』の続きですが、『式部の日記』を基に、作者の女性観から始まりました。空蝉が源氏を拒絶したのは、"男の言いなりにはならない女" =式部でもあったと解説。実は式部はこの『源氏物語』を書くに当たって道長から紙や資料など多大な援助を受けており、関係を持ちながらも"あなたのモノ"ではないことを主張、『空蝉』にその役を演じさせているのだと。
病床の乳母・大貮を見舞いに行った源氏とその隣の家に住まう夕顔は、互いに氏素性を明かさぬまま関係を持ちます。大らかで何でも受け入れる夕顔とどんどん深い仲になっていくのですが、御所と違い庶民の生活音がすぐそばにある住居なので、世間から隠れた所へ移します。すると六条御息所の生霊が、夕顔を殺してしまいます。源氏の悲嘆ぶりは大変なものでした。
この『夕顔』の段では、式部が源氏をほめちぎることしきりです。目にする女でちょっとステキだとすぐ歌を送り気を引こうとしますが、そんなこんなはあっても、やはり着ているものから身のこなしまで誰もが吐息を漏らすほどの光の君なのだと随所で書き連ねます。
亡くなった夕顔は、頭中将の過去の女性でした。二人には3歳になる娘・玉蔓がいたのです。後にこの玉蔓も物語に登場することになります。先生は、作者の作家としての手腕と当時としては稀有なほどの自立心を高く評価、「それが物語の幅となり奥行になっています」とのことでした。
春の講座は終わりましたが、受講生の希望で『源氏物語』はこのままスペシャルとして引き続き行われることになりました。早くも真夏の暑さの今日、皆さん、手に扇子、首に保冷剤、冷たい飲み物持参で受講、「今日もどっぷり源氏の世界に浸りました。暑いけれど続きを楽しみに通います」と、涼やかな表情で帰っていかれました。 |