学校法人奈良学園

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◇2011-08-08 (月)

夏期特別講座「奈良、高畑に佇んで」を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で夏期特別講座「奈良、高畑に佇んで」第4回を開催しました。本講座は"白樺派サロン"のメンバーである先生方に講師となっていただきます。本日は「奈良の近代美術と戦争の時代~『懸崖ニ倚ル木炭増産』をめぐって~」と題して、姫路市立美術館学芸員の平瀬礼太先生をお招きして講義いただきました。

平瀬先生と当旧居とのご縁の始まりは、先生が姫路市立美術館で赤穂出身の画家『中村義夫展』をなさってからとのこと(注:中村画伯は昭和3年、現旧居隣りに転居。現在はその子息の中村一雄邸)。本日は、先生が研究中の美術史の空白時代と言われる「戦争の時代の絵画」について、しかも奈良の地ということで奈良県出身の画家・庄田鶴友の『懸崖ニ倚ル木炭増産』(1944年)のカラー図版を用意くださって講義は始まりました。

受講者の中に庄田鶴友を知る人はなく、『懸崖ニ倚ル木炭増産』が十津川村の炭焼き風景と説明された折には「おお~!」と、どよめきの声が上がりました。あの戦時下の物資難・交通難のとき、実際に十津川村旭で画伯により描かれたものだそうです。そして、写実的でリアルな対象をやや荘厳な雰囲気に仕上げた優れた作品だと説明されました。

では、なぜこの絵が描かれたのか、その時代背景について興味深い内容を話してくださいました。まず美術展というのは戦時下でも行われており、それに出品のためだったということです。そして木材と森林の国・大和はエネルギー源としての木炭供出が使命、庄田画伯は"戦時文展(文部省美術展覧会)"にふさわしい題材としてこれを描いたということでした。先生の聞き取り調査では、三重県の入り稼ぎの人々の炭焼き小屋だったとか。

先生は「絵画の鑑賞は、見たまま、感じたままでいいのですが、ものによってはその時代背景まで考えてみるとより面白いですよ」と結ばれました。
旧居の庭は木々の緑がまぶしいほど濃く鮮やかに広がり、建物内に心地よい葉風を送ってくれています。アブラゼミに混じり、蜩(ひぐらし)の声も聞かれ始めました。

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