本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で特別公開講座《志賀直哉旧居で読む古典文学シリーズⅡ<源氏物語>》第10回を開催しました。本講座は"源氏をめぐる女性たち①"として紫式部の男性観、女性観などを読んできました。講師は当館の北森貞次館長です。
本日は第6巻の『末摘花(すゑつむ花)』に入りました。先生の「この段は大変な段です。式部が末摘花を典型的な醜い女性として、これでもかというぐらいこき下ろすのです」という説明で始まりました。源氏は、一度関係した女性とそれっきりということはなく、生涯にわたり何らかの形で関わりあっていくのですが、新たなステキ女性探しのアンテナは広く張られ、次々と渡りを付けていきます。
そんな折、大輔命婦に頼んで、その隣に住む末摘花との仲を取り持つよう計らわせます。作者・紫式部はその話の展開の端々に、その命婦と源氏の関係も匂わせますが、とまれ命婦は、末摘花がたしなむが琴の音を源氏に聴かせるなどの段取りをします。
さて、源氏が末摘花の透垣からのぞき見ようと寄ってみると、そこには何と出がけにまいた筈の頭中将が・・・。「実は後をつけてきたのです。このような用向きの出歩きには私をお連れください。お役に立ちますよ」と。
結局、源氏は末摘花と結ばれますが、何とか顔を見てみたいものだと願い、ある雪の朝それがかないます。ところが明るみで見た末摘花は、髪だけは長く立派なのに、「居丈の高う、・・・鼻(略)普賢菩薩の乗物(象)とおぼゆ」ほどで、色は白過ぎ、おでこは広過ぎ、顔は長過ぎ、体は痩せぎす、・・・と、さすがに見てはいられない源氏なのでした。
しかし付き合うほどに末摘花は、遠慮のない気立てが良い女性で、"女の良し悪しは身分の高低や、風貌など見た目によらないものだ"と源氏をして式部は言わせます。
旧居の南庭に植わっている科木(シナノキ)が、苞(ほう:花柄が分岐した葉状のもの)の中央から丸い実を垂らし始めました。秋には苞葉共に落下するそうです。また羽根つきの羽根の玉に使われる無患子(ムクロジ)も今青々とした実をつけています。この果皮はサポニンを含み泡立つので、欧米では「ソープナッツ」と呼ばれ、エコ石鹸の原料ですとか。旧居には四季折々に様々な植物が見られます。興味のある方はぜひご来館ください。 |