学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2011-11-14 (月)

秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第2回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋期第3講座「近代文学シリーズⅣ」(全6回)の第2回を開催しました。講師は、京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本日の近代文学講座は、前回に続き「秋を描く②」と題して、 "秋"が文学でどのように描かれているかを味わいました。先生は前段として、「作品の世界に入るということは、とりもなおさず自分を読むことで、その魅力は自分と違う面と似通った面とがあるからですね」とおっしゃって、「大きな独り言をどうぞ」と各自の自由な読み方を促されました。

「秋を描く①」での内容を辿りながら、井上靖の文学人生のきっかけとなった少年時代の友・藤井寿雄の3行詩のことを書いた『石英の音』や、旧制沼津中時代の『青春の粒子』をおさらいしました。そして先生は、ヴェルレーヌの『Chanson d'automne』を訳され、韻を踏みながら朗読、用意のラジカセでイベット・ジローの『枯葉』と、高田みづえの『秋冬』を聴かせてくださいました。

受講生は小さな声で口ずさみながら、普段なじみのないフランス語にも、短かく限られた言葉の中に、その言葉の持つ調べが美しく響くのを感じ取られたようでした。島崎藤村の『秋のうた』やサトウ・ハチローの『ちいさい秋みつけた』然り。秋という季節は、人生の機微を感じさせることが多く、その素材として"落ち葉"がよく使われるとのことです。

堀辰雄の『風立ちぬ』の序に「Le vent se leve, il faut tenter de vivre」と自ら書き込んだヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節があり、その「風立ちぬ いざ生きめやも」という言葉がどんな状況で出てきたのかを読み取っていきました。先生によると、『海辺の墓地』(村松剛訳)の第24連に"風が立つ・・・生きねばならぬ"と結ばれているのは、海(詩を書く紙)と自分の表出する詩の世界との二つを重ね、海を破って新しい表現世界を作っていく決意の表れの詩ということです。

本日は、講座に先立ち、旧居の庭の柿の実で作られた干し柿がふるまわれ、皆さん「わぁ、珍しいものを。ごちそうさまです」と喜んで召し上がりました。また、受講生の衣川堅二郎氏が上梓された短歌集から3首が食堂(講座室)に展示されるなど、旧居は文化サロンとしての役割を高めつつあるようです。

▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.