学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2011-12-19 (月)

秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第5回を開催

  • 秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第5回を開催
  • 秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第5回を開催
  • 秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第5回を開催
  • 秋期第3講座「近代文学シリーズIV」の第5回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋期第3講座「近代文学シリーズⅣ」(全6回)の第5回を開催しました。春日若宮おん祭も終わって冬本番となったこの日は、本年最終の講座でもあり、講座室は満杯の出席者で熱気にあふれんばかりでした。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

先生は、前回読んだ芥川龍之介の『秋』のまとめの板書を用意して講義に入られました。それによると、この作品は<季節の移ろい>と主人公・信子の<心理>を二重写ししたものだということです。ではテーマである"喪失"したものは何かと言うと、①自己劇化・自己美化に支えられた生活であり、②青春の余韻、夢、ロマンの世界であり、③姉妹愛・肉親との絆だと言えると。

信子の「秋――」のつぶやきで終わったこの小説の続編を考えてみるという楽しい時間の後で、やはり芥川の『蜜柑』を読みました。これら2作で芥川の全体像が大体つかめるということです。受講生の中から描写表現の変化についての質問が出ると、「カメラを持たせたらズームアップ、遠景と、景色を自在に切り取る芥川です」と、彼の情景描写の巧みさについても先生は絶賛なさいました。

芥川は小説だけでなく俳句にも親しみ、高浜虚子との親交も今年の新聞記事にあった通りで、その作品にも触れられました。35歳で自ら命を絶ちましたが、彼が文学者になったのは、斎藤茂吉の作品『赤光』との出会いだったということを、晩年に茂吉の診察を受けていた等のエピソードも交えながらお話しくださいました。

次に、司馬遼太郎が『奈良散歩』(「街道をゆく24」朝日文庫)に記した、奈良の歌人・前川佐美雄(1903~1990)と、やはり歌人であり画家である六條篤(1907~44)についてのさわりを拝聴しました。先生の引き出しは数多く、また広く深くて、文学事情通とでもいう寄り道や脱線が多く、「今日も予定通り進みませんでした」と詫びられるのですが、皆さん「それが楽しいし、期待していることです!」という具合です。

次回は芥川と虚子の交流や、多武峯郵便局長でもあった六條篤とその芸術についてと予告して今日を締めくくられました。その六条篤展(昭和58年)を奈良県立美術館で開催した当時の同館学芸員・平岡照啓氏は、植村先生の教え子ということで、よりその人物像に迫れると年明けへの期待を胸に、皆さん先生へ謝辞を述べて旧居を後にされました。

剪定を終えて冬の様相となった旧居の庭ですが、万両、千両、南天の実などが真っ赤に色づき、新春迎えの風情を漂わせています。

▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.