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◇2026-05-18 (月)

志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《サルトルは難しくない!--『嘔吐』の三通りの読み方》開催

  • 志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《サルトルは難しくない!--『嘔吐』の三通りの読み方》開催
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 奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座「白樺サロンの会」を開催しました。今回のテーマは、「サルトルは難しくない!--『嘔吐』の三通りの読み方」です。講師には、関西学院大学教授の東浦弘樹先生をお迎えしました。


 講座ではまず、ジャン=ポール・サルトルの人物像と、彼の根底にある思想について解説していただきました。実存主義の哲学者として広く知られるサルトルですが、政治や社会運動に深く関わる「アンガージュマン(政治参加)」の文学者でもあり、数多くの戯曲、評伝、自伝を残したそうです。また、生涯の伴侶として歩みをともにしたシモーヌ・ド・ボーヴォワールとの同棲生活や、アルベール・カミュとの親交など、人間味あふれるエピソードもご紹介いただきました。


 続いて、本日の主たる題材である『嘔吐』についてお話が進みました。この作品はサルトルの処女小説であり、ボーヴォワールの助言を受けて、ミステリーの要素を孕んだ日記形式の小説として執筆されたそうです。


 物語は、主人公のロカンタンに突然襲いかかる「実存的不安」に起因する吐き気を覚え、その謎を解き明かしていくという内容です。
ここでいう実存的不安とは、「自分の存在には意味や目的、理由がある」という確信と、「いや、私という存在には何の意味も目的も理由もない」という真逆の思考が対立することで生じる動揺を指します。この思考を掘り下げると、「私は社会に必要な存在である」という思いと、「自分は無用な人間にすぎない」という意識が生まれることになります。


 こうした視点は、キリスト教が育んできた西欧文化に深く根ざしているといえるそうです。つまり、道端の小石ひとつにさえ神がそこにある意味を与えている、という世界観が前提にあります。小説『嘔吐』では、宇宙や世界との一体感を覚える瞬間に、存在の上層にある「芸術的創造」を介することで、その不快な吐き気を遠ざけることができるのだと結論づけられているようです。


 さらに、2つ目のアプローチとして、主人公ロカンタンが置かれた生活環境を紐解きながら、人間が本質的に抱える「孤独」について語られました。そして最後に3つ目の視点として、精神分析的なアプローチからの解釈についても分かりやすくお話ししていただきました。


 旧居の庭を歩いていると、足元に可憐なチリアヤメが咲いているのを見つけました。チリアヤメは英語で「草原の妖精(Prairie Nymph)」と言われています。サルトル流の捉え方をすれば、こうした表現や創造の世界に触れることこそが、私たちが日々抱く実存的不安を解消へと導いてくれるものと言えるのかもしれません。

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