




◇2025-11-17 (月)
2025年11月12日、志賀直哉旧居にて、奈良学園大学の田中紀子准教授による公開講座が開催されました。
テーマは「江戸時代の和算文化」です。
江戸期の和算といえば関孝和がよく知られていますが、
当時の算学には関派だけでなく、各地にいくつかの流派が存在していました。
とくに関西では、宅間源左衛門能清を祖とする宅間流が大きな勢力をもっていたようです。
今回の講座では、数学科出身である田中先生による解法の解説も加わり、
日本史と数学が交差するたいへん興味深い内容となりました。
掲載した幾何図形の問題は、宅間流の『起術解路法』に収められた難問の一つです。
江戸時代の算学では、幾何問題を代数方程式へと書き換え、 因数分解を通じて解を抽出するという手法が主流でした。
関派には微分積分に相当する高度な技法も見られますが、
流派を越えた研究交流は禁じられていたため、体系化には至りませんでした。
さらに興味深いのは、このような和算の問題や解を「算額」として寺社仏閣に奉納する文化です。
現在でも、絵馬のように各地の神社や寺院に算額が残っており、江戸期の知性を今に伝える貴重な資料となっています。
紅葉の季節となってきましたが、観光で寺社を訪れる際には、
こうした数学文化の名残を探してみるのもよいかもしれませんね。
(奈良学園 経営情報部 tana)