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◇2024-11-27 (水)

11月の志賀直哉旧居

  • 11月の志賀直哉旧居
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 旧居の玄関を入り廊下を進み、格子越しに中庭を見ると、茶室の前に紅葉した楓の木が目に止まります。静寂の中に微風に揺れ動く真っ赤な楓は、茶室の静けさと調和し、しばし時間の流れを忘れさせてくれます。


 晩秋に楓が一斉に紅葉する情景は、日本文学において「移ろい」や「無常」を象徴するものとして取り上げられています。
古代から近代に至るまで、紅葉の描写は自然と人間の営みの関係を深く考察する題材となっています。


 また、「美しさ」と「儚さ」を表現するものとして多くの文学作品に登場します。例えば『古今和歌集』の中から百人一首にも取り上げられた猿丸太夫の歌「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき」は、そうした美意識を端的に表していると言えます。


 『源氏物語』では、紅葉が季節の移ろいや感情の揺れを表す場面で用いられています。たとえば、「紅葉賀」の巻では、秋の紅葉が人々の感情の深まりを象徴しています。近代文学においても、紅葉は多くの作家が時や心の移ろいの象徴として作品の中に取り入れています。


 ところで「もみじ」という言葉は、「揉む(もむ)」という動詞に由来するそうです。この「揉む」は、草木の葉が赤や黄色に変わる現象を表しており、特に秋に葉が色づく様子を指します。この変化がまるで葉が揉まれて変わったように見えることから「もみじ」と呼ばれるようになりました。ちなみに元来「揉みづ」から来た言葉で、古くは「もみぢ」と書かれていたようです。昭和21年に内閣訓令・告示で「現代かなづかい」が定められた時に「もみじ」と表記されるようになったようです。


 志賀直哉の作品には紅葉はほとんど登場しません。ただ彼が日常生活の中で、秋の訪れごとに美しく紅葉した楓を眺めていたことが想像でき、きっと紅葉が語りかける言葉に、作品執筆にも大きく影響を受けていたに違いありません。

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