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◇2023-01-16 (月)

志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《泉鏡花『薺』・『蝶々の目』とその叙述について》を開催しました

  • 志賀直哉旧居特別講座 白樺サロンの会《泉鏡花『薺』・『蝶々の目』とその叙述について》を開催しました

 1月16日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、特別講座白樺サロンの会「泉鏡花『薺』・『蝶々の目』とその叙述について」を開催しました。講師は帝塚山大学准教授の西尾元伸先生です。


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 大正10年に発表された泉鏡花の短編小説『薺』(なずな)、『蝶々の目』は共に、斜向かいに住む少女"みんみい"を可愛がる圭吉夫婦の姿を描く作品です。『薺』と『蝶々の目』は、幻想文学の作家として知られている泉鏡花が、日常に起こった出来事や心情を綴った数少ない作品だそうです。ただ、語りの重層や、古典、歌舞伎などからの引用など、泉鏡花が幻想文学でふんだんに使っている文体で書かれているようです。さらに、子守唄の引用や、湿った三味線の音の描写、おぶった子どもが寝ついた時の重さの変化感など、音と明暗をイメージさせる表現は、泉鏡花特有の世界を表していると教えていただきました。また、泉鏡花自身が母親を早くに亡くしており、ままごと遊びで少女"みんみい"が母の役をする場面など、それにまつわる心情的な影響もこの作品から見受けられるそうです。


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 この2作品は、既に亡くなっている少女"みんみい"に対する強い愛情を、泉鏡花特有の手法で綴られた小説であると言えるようです。


 ちなみに現実の世界でもこの作品が書かれた時期に、スペイン風邪が大流行し、全世界で4,000万人以上、日本でも一説には45万人もの人が亡くなったそうです。スペイン風邪については、志賀直哉の小説『流行感冒』でも、モチーフとして取り上げられ、当時の感染がもたらした社会的な影響がうかがわれます。


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 旧居のサンルームに置かれている、訪れた方が書き込む「思い出ノート」を拝読させていただきますと、時にはその中に様々な人生が語られていることもあります。泉鏡花が身近な心情を語ったように、人それぞれの中にも、たくさんの物語があることを感じさせてくれます。

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