◇2022-02-24 (木)
旧居の庭で季節の移ろう様子を愛でることを目的に、何度も訪れる人もおられるそうです。2月後半となっても、まだまだコートやマフラーが手放せない日々が続いています。
一見して旧居のお庭の風景も冬色のまま変わらぬように見受けられますが、よく観察すると、草花たちはすでに私たち人間よりも早く春の訪れを感じ取っているようです。
椿の木の深緑の分厚い葉に覆われた中に、先月まで固い緑の小さな花芽が、赤く染まり始め、開花直前となっています。よく木を観察すると、表目には見え辛いですが、陽の当たる上の方には、すでに2つか3つの花が咲き始めていることに気づきます。
スイセン(水仙)はすでに花を咲かせているものもありますが、新芽が土の中から何本も勢いよく伸びてきています。ギリシア神話にあるように、たくさんの白い美少年たちは、やがて春の草花の開花を祝う讃歌を奏でてくれるはずです。
さて、白梅の花は、すでに開花が始まっています3おそらく3月に入ると、旧居の梅も満開となり、訪問される方々の目を楽しませてくれでしょう。さらに落葉した木々の枝を観察すると、アジサイ(紫陽花)や、カエデ(楓)の芽が、すでにできてきているのを発見します。
志賀直哉の作品『流行感冒』には、植木屋が登場します。物語は、その植木屋が感染源となって展開するものですが、志賀直哉自身も庭づくりには、家づくりの一環として、かなり興味を持っていたようです。
旧居の庭は、そうした志賀直哉の感性を、できる限り現在に残し、かつての時の空気を感じていただけることができるはずです。