◇2021-03-24 (水)
3月22日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第43回「ことばの力〜ことばによる見方・考え方をはたらかせて〜」を開催しました。
講師は奈良学園大学人間教育学部准教授の正木友則先生です。
始めに、日本語が英語圏のアルファベットのみで表記できる言語であるに比べ、平仮名、片仮名、漢字などで構成される、外国人だけではなく日本人としてもとても難解であることが、むしろ奥深い表現が可能であること。
また、言葉は、「これまでのこと」「今、ここで」「これからのこと」を表現し、伝えることが出来ます。つまり言葉は過ぎ去ったことや未来のことなど、時間を切り取って語り直すことが出来ます。これこそが言葉の力だと教えていただきました。
続いて、先生から「今、皆さんが心に浮かんでいることを漢字一文字で表現してみましょう」という1分間ワークがありました。
受講生からは「裕、あるいは遊」「楽」「静」などが発表され、それについて先生や受講生同士での質問や意見交換がありました。他の人の考え方を聞く、または他の人に自分の意見を伝える、さらに新しい考え方がプラスアルファーとして生まれる、これが言葉の力だと教えていただきました。
次に小学校の教科書によく登場する新見南吉の『ごんぎつね』を、受講生皆で黙読しました。この物語の主人公はごんぎつねなのか、兵十なのか、また、結論としてごんぎつねは幸せだったのか、そうでなかったのかについてディスカッションしました。
誰もが知る文章の中からも、場を二分するほどの捉え方の違いがあり、それを深めていくことの意義について体験的に学ぶことができました。
セミナールームの窓際の花瓶には黄色いスイセンが生けられています。
ギリシア神話では、スイセンは美少年ナルキッソス(ナルシス)の化身だとされています。彼は水面に映る自分の美しさに溺れ、水面の自分に飛び込み命を落とします。そしてその場所には無数のスイセンが咲いた、と言われています。
本日の講座で学んだように、自分の言葉に溺れず、たくさんの言葉を聞き、深く考える習慣を持ちたいものです。