学校法人奈良学園

ニュース & トピックス
ニュース & トピックスニュース & トピックス

ニュース & トピックスニュース & トピックス

◇2020-09-28 (月)

奈良学園公開文化講座第38回「残缺の美」を開催しました。

  • 奈良学園公開文化講座第38回「残缺の美」を開催しました。

9月28日(月)、奈良学園セミナーハウス・志賀直哉旧居にて、奈良学園公開文化講座第38回「残缺(ざんけつ)の美」を開催しました。


講師は志賀直哉旧居(奈良学園セミナーハウス)館長・奈良学園大学名誉教授の大原荘司先生です。


20200928_002.jpeg


冒頭に、志賀直哉が昭和13年、奈良についての随筆の中から「今の奈良は昔の都の一部分に過ぎないが、名畫の残缺が美しいやうに美しい」というフレーズが紹介されました。


「残缺」とは、一部が欠けて完全でないことを意味しますが、志賀直哉は完全でない自然なことの美しさを好んでいたそうです。
志賀直哉がここ旧居に住んでいた頃、2階客間に置かれていた木彫りの菩薩像は、残缺の美を思わせる要素がいくつもあったことが伺われます。
現在、菩薩像は会津八一記念博物館が所蔵し、今は当館館長が手彫り複製した菩薩像が置かれています。
こうした残缺の美しさは、多くの仏像美術や建築物、文学、絵画などの作品に残されており、いくつかの例をプロジェクターで紹介していただきました。


20200928_003.jpeg


また、ヨーロッパにおいては、印象派の絵画には、そうした残缺の美しさと言える作品が多く、志賀直哉自身もそういった作品を好んでいたそうです。
江戸の絵師、司馬江漢によると、残缺の美しさは、非対称であり、自分にも同じものがあると気づかせる自己相似性を持ち、ノミの跡やギン目(斧の跡)が残っているような味わいがあり、自然の摂理による破損があることだと教えていただきました。


最後に、結論として「われわれの人生を含め、ありのままの相そのものが残缺である」とお話をいただきました。


20200928_004.jpeg


旧居の庭は、今、季節替わりの時期で、夏の最後に咲き誇っていたサルスベリの花も、大半が散り終えています。暑さと雨で葉を茂らせた草木が深い緑一色の塊のように庭全体を覆っています。
やがて、柿の実が色づき、カエデが真っ赤に紅葉する季節がやってくる予感が、庭を吹き抜ける涼風の清々しさに感じることができました。


▲ページトップ

Copyright (C) Naragakuen. All right reserved.