◇2017-03-27 (月)
本学のセミナーハウス・志賀直哉旧居において、「近代文学講座」と題して連続講座を開催しています。京都大学以文会会員・植村正純先生を講師にお迎えし、近代文学における「文学表現の諸相」を学んでいます。
後期最終回となる今回は「立原正秋の随筆から」というテーマで、彼が傾倒した世阿弥についての文章をいくつか取り上げ、世阿弥の美の世界を探りました。
立原は随筆の中で世阿弥の好きな言葉として「花なくては萎れ所無益なり」を挙げています。花より「萎れ」を一段上のことにたとえ、花を極め尽くした人が見事に萎れていくところにあるまことの花の美しさ。随筆を通して世阿弥が求め続けた深遠な美意識を味わいました。また「秘すれば花」という含蓄のある表現を取り上げた随筆も紹介。決して思想を語らず、徹底して「美」を追求したことが一つの不抜な思想となり得たという立原の解釈をふまえつつ、「風姿花伝」の能楽論にも触れました。
旧居の庭では春の陽射しを浴びて、バイモ(貝母)がうつむき加減に小さな花を咲かせていました。