学校法人奈良学園

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◇2015-08-24 (月)

平成27年度 近代文学前期講座第4回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居において、近代文学講座の第4回を行いました。この講座は、井上靖の作品を題材にして「文学表現の諸相」について考察するもので、講師には京都大学以文会前評議員・植村正純先生をお迎えしています。

これまでの講義では『漆胡樽(しっこそん)』『その人の名は言えない』などを読み、井上靖の文学表現を見てきました。先生は井上靖について、井上自身の言葉にもあるように「事物に託した人間の象徴劇」を書く作家であると話をされました。『漆胡樽』ではその題名にもなっている「漆胡樽」を、また『その人の名は言えない』では「龍安寺の石庭」を使って、時代や場所を超えて存在する人間、あるいは人生に付きまとう「なにか」を井上は巧みに表現しています。これを踏まえ、今回は『猟銃』を読みました。ここにも猟銃という「事物」に託された「人間の業」が描かれています。

また、「ハバロフスク」という詩とエッセイも読みました。井上靖はハバロフスクを2度訪れていますが、2度目の前に、100年近くも前に同じ場所を訪れた榎本武揚のことを知ります。そのことを知ってからハバロフスクを訪れたがゆえに、まるで自分が榎本武揚になったかのような錯覚を覚えるのです。その時の不思議な感覚を詩にしているのですが、この作品にも私たちはぐっと引き込まれます。これこそが、井上靖の卓越したストーリーテリングの力だと先生は述べられました。

講義では、『猟銃』や『その人の名は言えない』の映画化されたときの話もありました。先生が当時の雑誌などを見せてくださると、受講生の皆さんも懐かしそうに見たり話したりされ、とても和やかな雰囲気の講義となりました。

旧居のサロンに座っていると、アブラゼミの鳴き声に混じって、ツクツクボウシの声も聞こえるようになりました。

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