学校法人奈良学園

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◇2015-05-19 (火)

白樺サロンの会第1回 相愛大学呉谷充利教授「志賀直哉の国語問題とひらがな-文字と文学-」の講義を行いました

  • 白樺サロンの会第1回 相愛大学呉谷充利教授「志賀直哉の国語問題とひらがな-文字と文学-」の講義を行いました
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今年度も本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居にて、前期特別講座「白樺サロンの会」を開催しました。当講座は、旧居界隈の芸術や文学に精通する「白樺サロンの会」会員の講師を迎えて開かれます。第1回目の本日は、相愛大学の呉谷充利教授に「志賀直哉の国語問題とひらがな-文字と文学-」と題してご登壇いただきました。

呉谷先生はまず、志賀直哉が戦後間もなく提唱した「日本語のフランス語化」や森有礼による「日本語の英語化」という日本語問題に触れ、その考察として日本語の起源、および文字の表音と象形について紹介されました。先生は日本語文字がアルファベットのような「表記」ではなく、コミュニケーションをはかる「表音」と「象形」によって成り立つことを示唆。この日本語文字による表現力は、万葉集の歌からも垣間見られ、男女が歌を交わす「歌垣」を源流とします。
さらに万葉集をひも解くと、日本語の起源や概念がより詳細に見えてきます。例えば万葉仮名を起源とする「ひらがな」は、本来中国の漢字をそのまま表記して発音するのではなく、「阿→あ」のように「象形」と「表音」を併せ持つ点が日本語の独自性で、中国の漢字やアルファベット文字とは異なる点を示されました。
ひらがなの成り立ちの談では「日本語は言語に基づく表現的世界を持ち、そこには言語の共同体性、手紙文のような二人称性が含まれている」と考察されました。その根拠として万葉の時代、手紙は『言う』ことを『葉に』留めるものであり、それが日本語特有の概念であることを分かりやすく解説されました。
また、言語の起源が「身振りや感情の身体的表現」を形象化したプロセス、「歌論」にも日本語の起源が窺える点について言及。その後、アイヌ語の「ユーカリ」がヨーロッパのポエムや叙事詩に極めて近い点、日本の私小説に心境的側面や自己の内面を他者の共感へ導く側面がある点など、日本文学の独自性についても講義されました。
上記の内容をふまえ、最後に呉谷先生は冒頭の日本語問題に立ち返られ、「志賀や森の弁は敗戦直後という激動期ゆえの冒険的発言であったものの、私の持論としては日本文化の雑種性を正統に評価するものではなかったと考えている」と結ばれました。
講義後、先生と受講者の間で志賀の「奈良に美味いものなし」の弁が話題に上りました。先生は谷崎潤一郎が「奈良のズクシ(柿)が美味い」との記述を例に、「谷崎が光を留めた奥に美的さを求めたのに対し、志賀は日本語問題同様、日本観にこだわらず合理的であった。双方の食の捉え方の違いが『陰翳礼讃』や『暗夜行路』に、そして当旧居の窓の造りにも窺い知ることができる」と締め括られました。


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