学校法人奈良学園

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◇2013-09-20 (金)

平成25年度 秋期特別講座
「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第2回を開催

  • 平成25年度 秋期特別講座<br>「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第2回を開催
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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」第2回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、6年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師に開かれるものです。第2回目の本日は、相愛大学教授で同会代表の呉谷充利先生に「夏目漱石と志賀直哉」と題し講義を行っていただきました。

講義は、本講座第1回同様、白樺サロンの会発行の『りずむ』第二号に先生が書かれた論文「夏目漱石と志賀直哉 ―漢籍から美術へ―」をテキストに進められました。

先生は日本文学界の第一人者である夏目漱石と志賀直哉の文学的素養の違いを、作品を挙げて比較しながら論じられました。漱石の文学的素養は、『草枕』に出てくる陶淵明(とうえんめい)や王維の漢詩に見られるように吟ずるもの、すなわち<音>であり<聴覚>を通してその世界を表現するところから出発しています。それに比べて直哉の文才は何で極められたかというと、<美術>であり<視覚>での把握だということです。

漱石は『草枕』で<雲雀の声>に魂の在り処を判然とさせられますが、直哉は、作品『和解』にあるように、父との確執で精神的に参っているときロダンの作品に心を開放されていきます。「『暗夜行路』の最終、大山での描写もそうですね」と先生。

そしてその視覚的な把握は、「直哉が学んだ学習院の図画工作で松室重剛の指導を受けたことに始まるのです」と続けられました。学習院画学課の主旨は「(略)文語文学の及ばざる所をも顕(あらわ)し以(もっ)て実際の必要に応ずる」もので、<文語文学を超える視覚の描写>でした。

「学習院で直哉は生の西洋文化に触れる機会があり、それは漱石や鴎外にはなかったもの。白樺派は、西洋美術の影響を受けて光と影のある克明なリアリズムを捉え、それが近代文学の確立をもたらしたのです」と続けられました。

ゆえに、芥川龍之介をして「彼はなぜあんな文章が書けるのでしょうかねえ」と言わせた直哉の文章は、「徹頭徹尾、視覚的な文章なのです」と先生は強調されます。

そして直哉の『イヅク川』を朗読され、「わずか2頁足らずの短編に直哉のエッセンスが凝縮しています」とされ、「僕には、作品中の<会いたい人>は彼が師事した内村鑑三で、<笑った>のは武者小路実篤以外に考えられない」と言い切られました。

先生はまた、恋愛小説として『こころ』(漱石)、『暗夜行路』(直哉)、『友情』(武者小路実篤)を挙げ、「漱石は、悩みを<自決>によって解決しようとしますが、武者小路はひたすら神に祈り、直哉は自決でも神頼みでもない視覚的にリアリズムを見ます」と説明を加えられました。

最後に先生は「この旧居で『暗夜行路』が書かれた。そのことに直哉への親近感と感動を覚えます。僕は困ったときは、鏡に映った自分の苦悩の顔を描けば解決できるのではないかと思います」と教室を沸(わ)かせて、今日の講義を終えられました。

講義終了後、受講生から内村鑑三と直哉との交流や、イタリアからのお雇い外国人教師などについての質問があり、丁寧に答えられました。次回は、奈良女子大学専任講師の吉川仁子先生による「夏目漱石『行人』について 漱石と志賀との関わりにふれながら」です。
※左上の写真は、『暗夜行路』が書かれたといわれる旧居二階の書斎

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