学校法人奈良学園

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◇2013-09-13 (金)

平成25年度 秋期特別講座
「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第1回を開催

  • 平成25年度 秋期特別講座<br>「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」(全7回)の第1回を開催
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本学園のセミナーハウスである志賀直哉旧居で秋期特別講座「志賀直哉・美術・宇宙の神秘」第1回を開催しました。この講座は、この地の芸術や文学に残る貴重な遺産を継承するために、6年前に発会した"白樺サロンの会"有志を講師に開かれるものです。第1回目の本日は、奈良女子大学名誉教授の弦巻克二先生に「志賀直哉と禅」と題し講義を行っていただきました。

開講に先立ち北森貞次館長から、弦巻先生と本日の資料ともなる『りずむ 第2号』(白樺サロンの会発行)の紹介があり、「"リズム"は直哉の作家活動の中核を為したものです」との説明を加えられました。

弦巻先生は奈良女子大学を退官後、禅宗の研究に力を注いでおられ、花園大学で聴講生を経て同大学の非常勤講師を勤めておられます。

講義は、「直哉は無神論者だという人がいますが、彼は人間が生きるということをずっと追及してきた人です」「『暗夜行路』の草稿で『時任謙作』に見られる自己確立への模索を禅宗の観点から検証してみます」という言葉で始まりました。

先生は、彼の作品と実人生と時系列にまとめた<「直哉と禅(仏教)」関係略年表>を示し、直哉が本当の自分、真実の自分、本当の人間とは何かを希求しながら作家活動を続けた過程を説明されました。そして、前述の『りずむ』に出稿された論文内の直哉作品で、直哉が禅宗(臨済宗)に救いを求めた表記例を挙げていかれます。

『暗夜行路』の随所に出てくる『臨済録』をかみ砕いて説かれ、直哉と禅の結びつきを検証されます。先生はまた、直哉の求める人間観は、数学者・岡潔の「世界は善意に満ちている」も然り、直哉の「不快」に対する「快」も「リズム」もすべて一体のものであると話されます。そしてそれは、「自然が美しく見える」のと同じことで、分析の必要なく充実している状態だと説かれました。

「直哉は、宗教の勉強をしたことはないが、父との衝突、女中との結婚問題や山手線の電車との接触事故など、数々の人生の危機に立つたび、禅宗との関わりの中にいたことがその作品から読み取れます」「彼が育った環境(祖父や父、叔父との関係)の中に教養としてありました。すなわち<薫習(くんじゅう)>でした」とまとめられました。

そして、「現在、志賀直哉はあまり評価されませんが、人間の生き様を考えるときは、大事な問題を含む作品を書いているので、読み返してみてください」と結ばれました。

禅宗を独学で学んでいるという受講生は「実に興味深くわかりやすい内容の講義でした。禅の本の内容は実に難しいですが、ある日ハッとわかることがあります」と話しておられました。また「直哉の作品を彼の人生と禅宗と絡めた考察で、作品の深みを感じました。こんな良いお話をたったこれだけの人数(定員40名)で聴いていいのでしょうか」と大満足の様子でした。

猛暑がぶり返し、扇子を使い汗を拭きふきの講座となりましたが、皆さん先生のお話の一言一句も漏らすまいと耳をそばだてて聴き入られたという90分でした。次回は相愛大学教授の呉谷充利先生による「夏目漱石と志賀直哉」です。

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