学校法人奈良学園

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◇2012-06-18 (月)

夏期近代文学講座第4回を開催

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本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で緑陰講座「文学表現の諸相」第4回を開催しました。講師は京都大学以文会評議員で文学講師の植村正純先生です。

本講座では先生が用意された資料を参考にしながら、『斎藤茂吉歌集』(岩波文庫)を読み進めています。先生は「まさに五月雨の時節になりましたね」と挨拶され、松尾芭蕉の名句の紹介で講座が始まりました。

先生は「大正2年、文学界に大きな石を投げかけた『赤光』。中でも<おひろ>と<死にたまふ母>は、多くの人の心を痛切に捉えた代表的な作品ですね」と、前回読んだ「おひろ」の特徴をまとめられました。

「おひろ」は愛する人との生き別れの悲しみの章ですが、(1)彼女との出会いを詠い上げる序曲 (2)過去を現在に引っ張り出した実景描写 (3)鎮まりゆく心で生き別れゆく悲しみを詠う余韻 で構成された自己美化(劇化)の三部作であると説明されました。

「おひろ」のモデルとなった女性についても触れられ、この作品は「私の大好きな句の『おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな(芭蕉)』の世界、まさに人生そのものですね」と話されました。

「死にたまふ母」は59首ですが、「茂吉の母親が59歳で亡くなっているのでおそらくその齢に因んだものでしょう」と前置きされ、先生が用意された資料で全作品を読んでいきました。31文字の中に枕詞とリフレインの多用、「乳足らし」や「人葬所」など茂吉の造語も確認しつつ、茂吉が危篤の母の元へ駆けつける場面から、子として医師としての看取り、野辺での見送りとその後までの心情の変化を読み取りました。

小休憩を挟んで、井上靖の『わが母の記』に入りました。「これは彼が59歳のときの作品で、彼の作風の分岐点とも言えるものです」と説明され、「ドラマティックな展開で<story-teller(語り部)>的と評されもします」と続けられました。

まずは80歳の母を描いた「花の下」からですが、作者自身とおぼしき主人公と、その父のことから始まります。この資料を読んでおくことはかねてからの宿題でもあったので、先生は「皆さんが、読まれたものとしてさわりを追っかけていきます」とおっしゃり、要所を絞って解説していかれました。

出会いの少なかった父と息子の"愛の相克の一端"を読み取り、"壊れたレコード"のようになった老母のくだりで残念ながら時間切れとなりました。次回はその続きと井上靖の文学表現について学びます。

当講座の受講生には文学界で活躍されている方が多く、その一人、碓井敦子さんがこのほど上梓された詩画集『想い花 -さながらに咲いて-』(Epic 1800円/写真)の紹介がありました。梅雨の晴れ間の本日は朝から蒸し暑かったものの、先生の軽快なジョークに、しばしば笑い声が上がる楽しい講座となりました。また、旧居の庭の池端にすっくと咲いた花菖蒲の一輪がさわやかさを感じさせてくれました。

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