学校法人奈良学園

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◇2010-10-25 (月)

秋季特別公開講座B(全5回)第3回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋季特別講座B『奈良と文学』の3回目を開催しました。講師は第1回、2回に続き、京都大学以文会評議員の植村正純先生です。

最初に講師から「開催中の正倉院展に行かれるなら、今回出陳されている漆胡樽をタイトルにした井上靖の『漆胡樽』を読まれることを薦めます」と、そのコピーを紹介され、「井上文学のスタートとも言える作品だ」と説明されました。

そのあと、前回の「森鷗外の奈良点描」のまとめとして、鷗外の軍医・作家として二足のわらじを履いていた第一の人生、帝室博物館(現国立博物館)総長として奈良で送った第二の人生があったことを確認。また、『奈良五十首』はその奈良での5年間に、社会風潮も織り込みながら詠まれたことを復習しました。「鴎外は職業軍人、作家、また家族思いの家長であり、鳥など小さな生き物にも愛情を持ち、『舞姫』に見られるような恋に燃えるロマンチストでもあったマルチ人間だった」とまとめられました。

後半は、いよいよ志賀直哉です。テキストの『小僧の神様 城の崎にて』(新潮文庫)の年譜で、直哉が奈良に住まいした大正14年(直哉42歳)から昭和13年(同55歳)までは、男盛りの時であり、88歳の人生を二分するような作家人生の集大成の時期でもあったと説明がありました。この志賀直哉旧居で完成させた『暗夜行路』は、直哉文学のテーマである"父子相克"が文筆のエネルギーであったわけですが、強い気分・自我の文学表現の作品になっているということです。先生によれば、奈良から東京に移ってからの作品は「お茶漬けのようなものです」と。

次回は11月1日(月)、短編『クローディアスの日記』と『范の犯罪』の読解です。

庭の柿も色づいて、2階書斎の軒には吊るし柿の縄のれんがかかり、その風情は直哉の時代を想像させてくれました。受講生は、文学熱の高い人も多く、『鴎外「奈良五十首」の意味』『森鴎外と奈良』など貴重な蔵書を持参された方がいたり、「先生のお話は、貴重な脱線が多くて楽しいです」「この講座に来ると脳内にアカデミックな部分ができるような気がして、生活にメリハリがあります」と言って「今日は『頭塔』が公開中だから、帰りに寄ります」という方々がいたりして、歴史文化熱の高さもうかがえました。

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