学校法人奈良学園

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◇2010-11-22 (月)

秋期公開講座B(全5回)第5回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋期講座B『奈良と文学』の第5回目を開催しました。講師は前1~4回に続き、京都大学以文会評議員の植村正純先生です。

最終回のこの日は、彼の奈良に来るまでの前期作品と、奈良に住まいしてからの後期作品の傾向を確認することから始まりました。前回の『クローディアスの日記』と『范の犯罪』に見られるように、前期作品は、人間としての生を問い自己を強く主張しているのに対し、奈良住まいになってからは、『小僧の神様』や『城の崎にて』のように、やさしく、情にあふれ、時にはユーモラスでさえある表現に作品が変わったとのことです。

続いて、奈良にゆかりの深い作家・内田康夫の『奈良山を越えた女』の読み進め方について説明がありました。同作品は、奈良の地名や寺社、仏像などが随所に現れ、歴史、考古学、古美術、古文化を背景に、他の文学も織り込みながらの運筆で、植村先生は、「ミステリーながら文学性の高い作品」と評されました。
そして奈良の名三宿だった對山樓(たいざんろう)に宿泊した正岡子規とその親友、夏目漱石との二人の大文豪の関わりについて学びました。

後半は北森貞次館長にバトンタッチ。館長は、志賀直哉がここに住まいしたのは、生まれる子供のために広い住まいが必要だったことと、2階客間の仏像(今は行方知れず)入手を谷崎潤一郎と争ったことによると前置きして、旧居の見どころを解説しました。大正14年1月9日の直哉の日記に「妻と子供を愛する。溺れないように愛しよう」とあり、「それは白樺派の理念そのものの"人道的に正しく愛そう"ということで、まさにこの家は至る所に妻子への愛が現れている造りになっています」と、例を挙げて説明がありました。また、旧居庭で採れた柿で作った干し柿が皆に振る舞われました。

午後からはオプションとして会場をその元對山樓(現天平倶楽部)に移し、同館の「子規の庭」を見学、女将の中塚隆子さんにお話をうかがいました。その後の懇親会では、参加者から「奈良にはまり、この講座にのめりこんでいます」とか、「本とはこういう風に読むものかと教えられた」、「植村先生の講座は、"平たく、あたたかく、わかりやすい"のが魅力」という声が聞かれました。

来週からは、冬期講座が始まります。寒さに向かう折ですが、志賀直哉旧居のサロンは熱い文学熱に包まれそうです。

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