学校法人奈良学園

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◇2011-07-18 (月)

夏期特別講座「奈良、高畑に佇んで」を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で夏期特別講座「奈良、高畑に佇んで」第1回を開催しました。本講座は"白樺派サロン"のメンバーである先生方に講師となっていただきます。本日は「訪ねて来た小林秀雄~モオツァルト」と題して、相愛大学教授の呉谷充利先生をお招きして講義いただきました。

「なでしこジャパン優勝!」というハッピーなニュースで始まったこの日、先生は「こういうめでたい日に大好きな志賀直哉旧居でお話し出来ることがうれしいです」と始められました。小林秀雄は志賀直哉を尊敬し、直哉の推薦などもあって文壇デビューを果たした作家です。その小林秀雄の『モオツァルト』のパラドックスを検証しながら、志賀直哉とのかかわりを考察していく内容でした。

『モオツァルト』は昭和21年の作品ですが、20年前の放浪時代、道頓堀で突然頭の中で鳴ったト短調シンフォニィの曲からモオツァルトの核心を突いた著作です。「正確な単純な美しさがじつは、それが生まれでる道筋においてまったく逆な災厄や不幸、苦痛をはらんでいる」。このパラドックスを彼はモオツァルトに見ているとのことでした。

小林秀雄は大正14年に中原中也からその愛人・長谷川泰子を奪うのですが、男の友情を代価に奪った恋人なのに得るものが無く、数年後には別れて関西へ来ます。そして昭和3年から4年まで奈良に住みます。彼は大正13年頃から直哉を訪ねていますが、この旧居にも何度か訪れたことでしょう。後に『志賀直哉論』のなかで『暗夜行路』を"傑(すぐ)れた恋愛小説である"と論じますが、これは彼の恋愛観でもあったのだということです。

先生は「ある意味ドラマチックなやりとりがこの旧居で展開したというか、人間的な世界が蘇ります」と結ばれました。台風6号による雨のなか、帰途につかれる受講生さんたちは「小林秀雄は難解で避けてましたが、今日の話を聴いて興味が持てました」と話されていました。来週は奈良女子大名誉教授の弦巻克二先生による「志賀直哉の文学」です。

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