◇2015-10-12 (月)
本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居において、古典文学講座の後期第1回が行われました。この講座では、前期に引き続いて、奈良学園高等学校・元教員の吉村治彦先生を講師にお迎えし、平安時代を生きた歌人・西行の人となりを和歌をとおして考えます。
今回は、「西行と熊野・大峰」と題し、熊野参詣の際に読まれた西行の和歌について考えました。熊野詣とは、紀伊半島南部にある熊野本宮大社、熊野速玉神社、熊野那智大社の三山を参詣すること。はじめて熊野詣をしたのは、10世紀初頭、宇多上皇だといわれており、以降鎌倉時代にかけては皇室だけでなく、庶民も多く行ったといいます。先生は、紀伊半島の地図を見ながら、当時の熊野詣がどのようなものであったかをていねいに解説されました。
身に積もることばの罪もあらはれて 心澄みぬる三重の滝(山家集)
修験道・大峰(大峯)の山中にある三重(みかさね)の滝で西行が詠んだ歌です。仏教の教えの一つ、三業の罪のうち「口業の罪」が滝の流れで清められていくことを詠んだ有名なこの歌も先生は紹介され、滝を前にした西行の気持ちを推し量って解説されました。また、随筆家・白洲正子氏による解釈も紹介されました。
講義の最後には、来年4月に予定されている「文学散歩」のスケジュールのお話がありました。高野山から西行終焉の地・弘川寺を巡ります。受講生の皆さんも今から待ちきれない、といった様子でした。
秋が一気に深まっています。旧居の庭では秋明菊が可憐な花が風に揺れていました。