学校法人奈良学園

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◇2010-11-08 (月)

秋期特別公開講座B(全5回)第4回を開催

本学園のセミナーハウス・志賀直哉旧居で秋期特別講座B『奈良と文学』の第4回目を開催しました。講師は前1~3回に続き、京都大学以文会評議員の植村正純先生です。

旧居の柿も色づいたことであり、「柿くへば・・・」でも有名な正岡子規のことと、その子規と同い年であり、親交の深かった夏目漱石の年表も示しての前段から講座は始まりました。

まずは、志賀直哉の作品が「気分」と「自我」の文学表現であり、自己を強く主張し自分の在りようを確立した作家であったことを押さえた上で、この館で過ごした9年間、あるいはその前の奈良での4年間が直哉の創作活動の円熟期であり、後半への転換期となったことを再確認。続いて直哉の作品『クローディアスの日記』、『范の犯罪』を、主人公の心情の変化を追いながら読み進めていきました。

シェイクスピアの『ハムレット』は、特異な素材で実存の不安(人間存在)を投げかけた作品ですが、『クローディアスの日記』は、ハムレットの復讐相手・クローディアスの立場から人間考証したもので、クローディアスの気持ちの微細な変遷を記しながら、自我を主張している作品とのことです。『范の犯罪』は、抽象的な犯罪の舞台を設け、本当の姿の中に生きようとする人間を無罪放免するというもの。直哉の"自己を強く主張して生きよう"という思いの反映だと解説されました。「現在の裁判員制度ではこの事件をどう裁くでしょうね」とのコメントも。

この2作品も例外でなく「気分」という単語が続出するのですが、「直哉の創作の力が嫌味に感じさせずさらっと読ませてくれますね」と先生。続いて「もし時間があったら直哉の作品の中に"気分"が何回出てくるか数えてみてください」との言葉に、教室は笑いの渦に包まれました。食堂だけでなくサンルームまで埋めた受講者の皆さんから「作品に関連して、海外文学にまで広げた内容のお話が魅力だし、はあ~、そうなんだと、毎回勉強になります」との声が聞かれました。

次回は11月22日(月)、「古文化財とミステリー作家」「奈良の宿と文学の出会い」をテーマに奈良にゆかりの深い作家と作品についてです。オプションとして午後は会場を元對山樓(現天平倶楽部)に移し、同館の「子規の庭」を見学、「正岡子規と夏目漱石」の講座が開かれる予定です。

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