登美ヶ丘講演

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第9回 (平成24年8月25日)

「命の尊さを考えよう-高度先進医療その光と影-」 京都大学大学院研究科教授 京都大学病院副病院長 一山 智 氏

第9回は、京都大学大学院研究科教授・京都大学病院副病院長である一山智氏をお招きしました。
まず、1990年6月の京大病院での生体肝移植の例を上げ、その後も肝臓の移植により多くの子どもの命が救われ、元気に成長している姿の写真を見せ、命の尊さと医療倫理の問題点を話されました。
また、糖尿病のインスリン療法ではインスリン注射により血糖値を制御していましたが、副作用でさまざまな合併症を併発することもあり、研究の結果、膵臓の膵島の分離と正常な膵島の移植により血糖値を制御でき、医療が絶えず進化している実態を説明されました。
次に、2006年10月の京大病院で脳死肺移植手術中に患者が亡くなられた事例を紹介されました。院外での調査委員会の調べで、長時間の手術中に医師が現場を離れていた空白の時間があり、そのために患者さんが脳死に至ったとの結論が出されました。一山氏も副病院長として直接に関わっており、謝罪の会見を 行ないました。人の命を左右する医療現場の重要性と、100回の成功は当たり前でも、1回の大事故で信用を失ってしまう病院経営のリスクについて、経営者としての立場と安全管理の考え方を併せて話されました。
その後は、臓器など各部位を造るES細胞やiPS細胞などの最新医療技術を、生命倫理の問題点を踏まえ話されました。また、手術機器の最近のめまぐるしい進化の例をあげ、工学部の知識・技術が医療現場に関して無くてはならないものと説明し、医工連携の重要性を話されました。
最後に、学生からの質問では、脳死の基準に関する生命倫理の問題が多くあり、命の尊さについて真剣に考えていました。また、iPS細胞について、「ガン化の恐れはないのか」、「アメリカが研究を積極的に行なっているのでは」という質問もあり、最新医療について関心を示す学生がいました。