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韮崎にて

校長
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8月4日(土)に東京で行われた「ディベート甲子園」と「鉄道模型コンテスト」を視察する前日、山梨県の韮崎市を訪れた。韮崎と言えば、私には中田英寿がいた韮崎高校サッカー部を知っている程度だったのであるが、今年11月に予定している本校開校10周年記念式典での講演をお願いした大村智先生(2015年ノーベル生理学・医学賞受賞)の出身地ということで、先生の著作を読むうちに、ぜひ訪れたいと思うようになった次第である。

大村先生の著作を読んで、まず驚いたのは、先生の微生物についての研究成果が、何億というアフリカや南米の熱帯地域の人々を病気から救ったということである。定理や法則等の発見ではなく、こうした私たちの目に見える形での成果を挙げた方がノーベル賞を受賞されたということが、日本人として誇らしいと思った。また、その一方で、大村先生は美術に造詣が深く、数多くのコレクションをお持ちであること、そしてそれらの作品をご自身の関わる施設で多数の方々に公開されていることに関心を持った。今回、韮崎を訪れたのも、先生が建てられ、市に寄贈された「韮崎大村美術館」を見学することが第一の目的だったのである。

今年の異常気象の中でも特に暑い日であった。ただ、都会の人工物が増幅させる暑さとは違い、田園風景の中のいかにも夏らしい暑さに気持ちよさを感じることもできた。山を背に、田畑に囲まれた地に美術館があった。昼日中であるためか、見学者は私だけ。ゆっくりと鑑賞させてもらった。大村先生が女子美術大学の理事長をされておられた縁から、多くの女性作家の作品が展示されていることにも興味を惹かれ、斬新な作品に新鮮さをも感じることができた。2階に上がってみると、先生が著書で自慢されていた通り、八ヶ岳連峰の絶景を見ることができた。そして、そんな休憩室にもさりげなく絵画や陶器が飾られてある。隣接するそば処「上小路」や「白山温泉」にも収集品の絵画が並べられていた。そしてそれが当たり前のようにそこに馴染んでいる。素朴さと華麗さ、科学と芸術がこの風景の中に同時に展開されていることに、少し不思議が感じもした。しばし暑さを忘れる小旅行であった。